研究概要 |
約50Maから始まったインド大陸とユーラシア大陸との衝突に伴ってヒマラヤ-チベット山塊は成長を始め,20-30Maにほぼ現在と同じ高さに達したと考えられる.これ以降ヒマラヤ-チベット山塊の上方への成長は頭打ちとなり,かわって側方への成長が始まった.この側方拡大を現在最も生々しく観察できるのはチベット高原の北東縁部である. 平成22年度に,ALOS衛星の立体視画像を用いてチベット高原北東縁の変動地形を捜索した結果,クムコル盆地に波長40kmに及ぶ大規模な活褶曲(複背斜構造)が存在することが分かった.本地域の活褶曲は波長が40kmに及ぶ大規模な構造であるから,その成因は地殻深部まで及ぶ断層運動ないし地殻深部における流動変形によると考えられる.衛星画像解析により,この複背斜構造を横切って時代を異にする数段の扇状地群が発達し,それらは過去十数万年間の変形を記録していることが分かった. 平成23年度は,当該地域の予備的な現地調査を行った.しかし,道路状態の悪さと湿地帯に阻まれクムコル盆地の核心部には到達できず,盆地東縁部まで到達するにとどまった.そのために,年代測定サンプルの採取は十分に行えなかったが,この地域に広く分布する最高位段丘から年代測定試料を得ることができ,現在この試料の表面照射年代を測定中である.平成24年度は,河川や湿地帯が凍結する晩秋~冬期に現地調査を行い,クムコル盆地核心部での試料採取と地質構造調査とを行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の現地調査は,現地へのアクセスの方法を探ることと,当該研究地域の地形・地質構造の概要を知ることを目的として行った.この目的は十分に達成でき,今年度の本調査にむけて必要な情報を得ることができた.また,年代測定用の試料も一部採取することができ,試料処理・年代測定作業にも着手し始めた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,クムコル盆地核心部に到達するために,河川・湿地帯が凍結する10-11月に現地調査を行う.現地では,年代試料採取および盆地内に発達する大規模な複背斜を横切る測線に沿った地質構造の調査を実施する.また,現地調査によって得られた試料の表面照射年代測定も実施する予定である.
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