研究課題/領域番号 |
22300316
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
三上 岳彦 帝京大学, 文学部, 教授 (10114662)
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研究分担者 |
高橋 日出男 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (40202155)
森島 済 日本大学, 文理学部, 教授 (10239650)
日下 博幸 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10371478)
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キーワード | 高密度気温観測 / ヒートアイランド |
研究概要 |
平成22年度に引き続き、広域首都圏200地点の気温観測データおよび40地点の降水量観測データの回収作業とデータ整理・分析を行った。研究成果の一部を(社)東京地学協会の機関誌「地学雑誌}の特集号(Vol.120,No.2)に発表した。具体的な研究成果は以下の通りである。 (1)夏季日中における首都圏のヒートアイランド現象に海風が与える影響の解析 関東平野では、夏季日中に海陸の温度差に起因する南寄りの海風が卓越するが、それが首都圏の気温分布に及ぼす影響を首都圏高密度気温観測データと気象庁等による風観測データを用いて分析・考察した。その結果、海風前線日の日最高気温でみた高温の中心は、埼玉県中央部と埼玉県北部~群馬県南部の地域に見られ、また海風前線の通過した地域では東京都大田区付近から北~北西方向に「くさび形の高温域」が認められることが明らかになった。さらに、海風前線日とは別に関東平野全域に強い南風が吹く日(強南風日)と海風前線日では、後者の方が沿岸と内陸の気温差が大きくなることや、海風前線日は沿岸から内陸に行くに従って、日最高気温の起時が遅くなるのに対して、強南風日はほぼ同時であることがわかった。 (2)2011年夏季節電による東京都心部のヒートアイランド緩和効果の定量的評価 首都圏高密度気温観測データを用いてヒートアイランド強度(都心と郊外の気温差)を求め、その日変化を2010年(平年)と2011年(節電年)で比較し、電力使用量の減少によるヒートアイランド緩和効果を客観的・定量的に算出する試みを行った。その結果、都心部では2011年7月の午後3時前後に最大約0.6℃の気温低下が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
首都圏200地点の高密度気温観測とデータ回収に関しては、本研究グループの分担研究者や関連する研究者の協力によって、ほぼ予定通りに行われている。データの解析と考察も順調に進展しており、とくに福島原発事故にともなう夏季の電力供給量の低下(節電効果を含む)によるヒートアイランド緩和効果に関する定量評価の解析が可能になった点は評価に値すると考える。一方、降水量観測に関しては、雨量計の設置が当初の予定より遅れたことや、平成23年度夏季に典型的な都市部の短時間強雨(いわゆる都市型集中豪雨)が発現しなかったこと等により、データの分析考察が進展しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後とも、首都圏高密度気温観測を継続し、データの解析を推進する方策であるが、降水量観測に関しては雨量計設置の遅れや観測密度の低下もあり、当初予定した降水量分布に関する詳細な解析は変更せざるを得ないと考えている。一方、高密度気温観測データの解析に関しては予想以上の進展があり、さらに研究を進展させる方策である。
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