研究概要 |
がん細胞に特異的な細胞分裂機構を同定するために、紡錘体や中心体等の制御に関わる141個の遺伝子について、ヒトのがん組織における発現解析を行なった。乳がん、膵臓がん、卵巣がん、大腸がんを含む7種のがんについて、正常組織とがん組織との発現変動を調べた結果、がん組織で二倍以上の発現亢進が見られた遺伝子は、7種すべてのがん組織での亢進が9個、6種のがんでの亢進が10個、5種のがんでの亢進が5個であった。これらの24個の中には8個のキネシンモーターと6個のチェックポイントタンパク質を含む動原体タンパク質が含まれていた。 TACC3はp53欠損マウスに自然発症する胸腺リンパ腫で高発現していることから、生体内での機能解析を行なった。Tacc3^<S/D>,R26CreERT2,p53^<-/->マウスを交配により作製し、経時的なMRI観察を行い胸腺リンパ腫の発生が確認された個体に、40HTを投与することによりTacc3を欠損させると、腫瘍の顕著な退縮が観察された。次に腫瘍退縮機構を明らかにするために、同マウスよりリンパ腫細胞株を樹立し、in vitroでの解析を行なったところ、Tacc3欠損により多極紡錘体が生じ、その結果細胞分裂の停止、細胞死の誘導が生じる事が明らかになった。同様のTACC3欠損による細胞死の誘導は、ヒトバーキットリンパ腫細胞や、T-ALL細胞でも観察された。 TACC3は上記のヒトがん組織における発現解析において、大腸がんを含む5種のがん組織で発現が亢進していた事から、現在Apcコンディショナルノックアウトマウスを用いて、生体内での消化管腫瘍における機能解析を進めている。
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