上皮増殖因子(EGF : Epidermal Growth Factor)は古典的な増殖因子の一つで、その受容体であるEGFR (EGF-receptor)は細胞内にチロシンキナーゼドメインをもつRTKs (Receptor tyrosin kinases)に属する。Mig-6はEGF受容体と結合しEGFシグナル伝達を阻害する蛋白質とされ、そのノックアウトマウスは上皮系の癌が多発する癌抑制遺伝子である。しかしながらMig-6のEGF受容体阻害のメカニズムとMig-6のリン酸化等の翻訳後修飾を介した制御機構については未知である。本研究では分子生物学的手法、生化学的手法を用いてそれらを明らかにする。 我々は本年度までの研究で以下の結果を得た。 (1)多種のキナーゼ阻害剤を用いた実験で、Mig-6のリン酸化がChk1阻害剤によって阻害されることを見出した。(2)EGF刺激によりMig-6のリン酸化が亢進する事が判明した。(3)in vitroでchk1がMig-6をリン酸化する事を証明した。(4)Chk1のsiRNA導入によりEGF刺激依存的なMig-6のリン酸化が抑制されることがわかった。以上によりMig-6のリン酸化がChk1によって実行される事が証明された.今後は、(1)Mig-6のリン酸化の生理的意義、(2)Chk1によるMig-6上のリン酸化部位の同定、(3)Chk1によるMig-6のリン酸化のシグナル伝達経路等について解析する予定である。
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