研究概要 |
上皮増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)は古典的な増殖因子の一つで、その受容体であるEGFR(EGF-receptor)は細胞内にチロシンキナーゼドメインをもつRTKs(Receptor tyrosin kinases)に属する。Mig-6はEGF受容体と結合しEGFシグナル伝達を阻害する蛋白質とされ、そのノックアウトマウスでは上皮系の癌が多発する。さらに数種のヒト癌で変異が報告されており、癌抑制遺伝子である。しかしなMig-6のEGF受容体阻害のメカニズムとMig-6のリン酸化等の翻訳後修飾を介した制御機構については未知で、本研究ではそれらを明らかにする事を目的とした。 我々はH23年度までの研究で以下の結果を得た。① EGF刺激によりMig-6のリン酸化が亢進する事 ② in vitroでChk1がMig-6をリン酸化する事 ③ Chk1のsiRNA導入によりEGF刺激依存的なMig-6のリン酸化が抑制される事 ④ 質量分析を用いたMig-6のリン酸化部位の解析により、Ser251、Ser301がリン酸化されている事 ⑤ in vitroでMig-6のSer251、S301がChk1によりリン酸化される事 H24年度はさらに以下の結果を得た。① Chk1のsiRNA導入によりEGF刺激依存的なMig-6-S251のリン酸化が抑制される事 ② Chk1のsiRNA導入によりEGFシグナル伝達(EGFR活性化、MAPK活性化)が抑制される事 ③ Chk1のS280のリン酸化はPI3K/Akt/S6Kの経路で起こる事 以上の成果をまとめて、EMBO Jに、Chk1 phosphorylates the tumor suppressor Mig-6, regulating the activation of EGF signaling. として報告した。
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