研究課題/領域番号 |
22300331
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 孝司 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30143001)
|
研究分担者 |
北村 秀光 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40360531)
脇田 大功 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (30555404)
|
キーワード | 癌幹細胞 / IL-17 / 腫瘍内微小環境 / CD133 / TGF-β |
研究概要 |
本年度はまず、発癌過程の炎症局所におけるサイトカイン発現パターンを遺伝子発現解析によって検討した。その結果、メチルコラントレン接種30日後においても、IL-17やIL-1β、IL-6、TNF-αなどの炎症サイトカインの発現が確認されたことから、慢性的な炎症応答が発癌の引き金となっていることが示唆された。そこで、IL-17の発癌への関与を検討するため、野生型(WT)マウスとIL-17KOマウスヘメチルコラントレンを接種し、発癌率を比較したところ、IL-17KOマウスでWTマウスに比較し、がんの発生が有意に遅延し、扁平上皮癌の発生率が低下することが明らかとなった。したがって、γδT細胞から産生されるIL-17は発癌の促進に寄与していることが示された。 また、我々が樹立したマウス皮膚扁平上皮癌細胞株において、癌幹細胞の性質を精査するため、幹細胞としての特性を規定する機能的分子(ALDH、Oct4、Nanog)を指標に癌細胞の幹細胞性を評価した。遺伝子発現解析の結果、ヒトがん細胞においてがん幹細胞マーカーとして報告のあるOct4遺伝子の発現がCD133+細胞で高いことが確認されたことから、Oct4を介して自己複製能などの幹細胞としての性質を保持している可能性が示唆された。さらに、CD133+がん幹細胞における高いTGF-β産生能に着目し、癌幹細胞、および非癌幹細胞の皮内接種によって各種担癌マウスを作製し、腫瘍組織内、癌所属リンパ節におけるTregの出現率についてFoxp3を指標にフローサイトメトリーにて検討したところ、CD133+がん幹細胞を接種したマウスにおいて、Tregが有意に増加していることを見いだした。今後、がん幹細胞、非がん幹細胞の免疫細胞に対する感受性や免疫逃避能に関する検討を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において予定していた、CD133+がん幹細胞における幹細胞の性質を規定する分子の発現解析、および、発癌過程の炎症環境における遺伝子発現解析と炎症性サイトカインIL-17の発癌への関与について、計画通り実施し、がん幹細胞の機能制御に関与するOct4の発現、IL-17の発癌促進機能を見いだした。さらに、CD133+がん幹細胞による制御性T細胞の誘導増強についても確認した点で、研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、担癌マウスモデルにおける、各種細胞、サイトカインの除去、中和によりがん幹細胞の免疫逃避機構について詳細な解析を実施する。さらに、IL-17の発癌促進機構についても、発癌過程の炎症応答へのIL-17の関与を遺伝子発現解析等によって評価し、実証する。
|