研究課題/領域番号 |
22300334
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
織内 昇 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (40292586)
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研究分担者 |
富永 英之 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (00393348)
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キーワード | LAT1 / 18F-FAMT / PET / アミノ酸トランスポーター / 膵がん |
研究概要 |
アミノ酸トランスポーター標的がん治療への18F-FAMT-PETの応用として、難治性である膵がんを対象に研究を行った。 膵がんは症状を発症して診断された場合、手術可能な症例は少なく、化学療法の効果も思わしくない。早期発見が困難で予後不良ながんである。術後化学療法としてゲムシタビンが標準治療であり、無治療経過観察と比較して予後は改善するが、5年生存率は20%程度である。上皮成長因子受容体のチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブの併用が生存期間を延長するとのデータも示されているが、十分な効果とはいえず、より有効な治療法が模索されている。膵がんのバイオマーカーや新規治療の開発は臨床的に重要である。 膵がんにおけるアミノ酸トランスポーターLAT1の発現を解析し、臨床病理学的な意義を明らかにする目的で、切除組織の免疫組織染色でLAT1の発現を評価したところ、約半数が高発現で、その発現強度は、病期、腫瘍径、腫瘍の増殖指標ならびに血管新生との相関が見られ、術後の予後とも相関した。したがってLAT1は膵がんの悪性度や予後の指標として有用な可能性が示唆された。 膵がんの新たな治療として、LAT1阻害剤の可能性を明らかにするため、膵がんの樹立細胞株を用いた治療実験を行った。培養細胞にLAT1阻害剤であるBCHを付加したところ、濃度依存的にアミノ酸の取り込みが抑制され、細胞増殖も抑制された。BCHはゲムシタビン耐性の細胞においても増殖を抑制し、感受性の細胞ではゲムシタビンによる増殖抑制を増強した。LAT1高発現細胞を移植したヌードマウスの動物モデルにおいて、BCH投与により対照群と比較して腫瘍の増殖抑制が認められ、PETで18F-FAMTの集積も低下した。以上よりLAT1阻害は、膵がんの治療に有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に沿って研究を実施し,研究目的を概ね達成している。
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今後の研究の推進方策 |
アミノ酸トランスポーター阻害によるがん治療の実験をさらに推進し、分子機構を明らかにする。 難治性のがんの対象を拡げてアミノ酸トランスポーター阻害による治療とPETによるモニタリングの有用性を明らかにする。
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