研究概要 |
本研究は、アミノ酸トランスポーターであるLAT1を標的とするがんの分子標的治療の可能性を探索するとともに、治療効果の評価におけるポジトロンCT(PET)の応用の意義を明らかにすることを目的に、動物モデルを用いた基礎的研究と臨床研究を実施した。 基礎的研究として、LAT1の阻害によるがん治療の可能性を明らかにするため、LAT1を発現する膵がん細胞にin vitroでLAT1阻害剤である2-aminobicyclo-(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid (BCH)を投与し、MTTアッセイによりviableな細胞分画を定量し、細胞増殖に及ぼす影響を検討した。培養細胞はBCHの付加により、濃度依存的にアミノ酸の取り込みが抑制され、細胞増殖も抑制された。BCHは膵がんの標準治療薬であるgemcitabineに耐性の細胞においても増殖を抑制し、感受性の細胞ではgemcitabineによる増殖抑制を増強した。次に膵がんを移植した動物モデルを作成し、BCHを投与した。BCHはLAT1を高発現する細腫瘍の増殖を対照群と比較して有意に抑制した。さらに動物モデルのPETを施行して18F-FMTの腫瘍集積と抗腫瘍効果との関連を検討したところ、治療効果による腫瘍の増殖抑制とともに、腫瘍の18F-FMT集積の低下が認められ、18F-FMTの腫瘍集積と治療効果との関連が示唆された。 臨床研究として、膵がん患者の手術組織のLAT1発現を免疫組織染色で評価した。LAT1の発現は膵がんにおいて、病理学的には細胞増殖や血管新生と相関し、臨床的には術後の患者の予後と相関した。 これらの結果から、LAT1阻害による膵がんの治療と、LAT1標的治療のマーカーとしての18F-FMT PETの有効性が示唆された。
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