研究概要 |
細胞接着分子群の解析に基づくがんの個性診断法の開発を目指した研究を行い、以下の結果を得た。 1.肺がんにおける CADM1と増殖因子受容体とのクロストーク:非小細胞肺がん細胞ではCADM1がMETと複合体を形成し、HGFによる活性化を抑制することを見出した。また、ゲフィティニブ感受性肺腺癌細胞から抵抗性細胞が出現する過程でCADM1の発現が抑制されることを見出した。また、CADM1の発現を抑制するmiRNA として、miR-214, miR-375を同定し、これらが非小細胞肺癌34例中で21 例(62%)、17例(50%)で高発現すること、miR-214, miR-375を肺腺癌培養細胞に導入すると、CADM1タンパク質の発現が低下し軟寒天培地中コロニー形成能が亢進すること、一方、そのinhibitorを導入すると、in vitro での創傷治癒活性が低下することを示し、miR-214, miR-375が非小細胞肺癌のoncomiR として働くことを示した。 2.膀胱がん、乳がんにおける細胞接着分子CADM1の異常と、その意義の解析:手術摘出膀胱がん、乳がんにおける細胞接着分子CADM1の異常と、その意義の解析:手術摘出膀胱がん147例、乳がん67例の免疫組織染色の解析から、それぞれ約63%、70%でCADM1の発現欠如、タンパク質の膜局在の異常を認めた。これらの異常は臨床病期の進行に伴って認められ、膀胱がんでは独立した予後予測因子となることを示した 3.CADM1を標的とする小細胞肺がん(SCLC) の診断、治療法の開発の基礎研究:CADM1がSCLCではスプライシング・バリアント(v8/9)を特異的に発現し、培養上清にCADM1細胞外断片が検出されることを示した。そこで、SCLCの特異的血清診断を目的として、特異抗体の作成や特徴的な修飾糖鎖の解析を行った。
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