研究課題/領域番号 |
22300340
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河野 通明 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00027335)
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研究分担者 |
尾崎 恵一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (50252466)
谷村 進 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (90343342)
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キーワード | 細胞がん化 / がん化学療法 / ERK-MAPキナーゼ経路 / MEK阻害剤 / 微小管重合阻害剤 / HDAC阻害剤 / 併用療法 / 動物個体系 |
研究概要 |
1.ERK-MAPキナーゼ経路遮断剤と微小管重合阻害剤/HDAC阻害剤の併用による抗腫瘍効果増強を、HT-29(Raf変異)、HT1080(Ras変異)細胞株等を利用したXenograft系で検討した。その結果、MEK阻害剤と微小管重合阻害剤(低濃度)との併用で、顕著な増殖抑制増強、さらにHT1080細胞では1週間毎、2度の薬剤処理で腫瘍塊の消失を認めた。一方、MEK阻害剤とHDAC阻害剤との併用に関しては、ヒドロキサム酸誘導体(MS-275)を利用した解析より、H1650(ERFR変異;Gefitinib耐性)細胞株においても極めて顕著な増殖抑制効果を認めた。なお、上記各薬剤併用実験条件下において、体重減少等の副作用は認められなかった。すなわち、MEK阻害剤と微小管重合阻害剤/HDAC阻害剤との併用は、副作用を軽減した、真に有効ながん化学療法に繋がる可能性を動物個体レベルで確認した。 2.MEK阻害剤と微小管重合阻害剤の併用による抗腫瘍効果増強の分子機構に関しては、それがM期で細胞死を誘導することに注目し、紡錘体チェックポイントに焦点を当てて解析を進めた。その結果、両薬剤併用処理したHT1080細胞等において、(i)Spindle lengthの短縮が誘導され、これが起点となって紡錘体チェックポイントが作動する、(ii)その結果として細胞周期が長時間にわたってM期前中期で停止する。これが上記薬剤併用による顕著な細胞死誘導に連動する可能性を見出した。 3.MEK阻害剤とHDAC阻害剤の併用による細胞死誘導増強の分子機構に関しては、両薬剤処理によって(i)Bimの発現上昇、ミトコンドリア膜透過性亢進、ROSの細胞質への放出、(ii)FOXO1/3の発現上昇、TBP-2の発現上昇、抗酸化能の減弱、が誘導される。これらが相乗的に作用して細胞内ROSの顕著な蓄積に繋がり、これが細胞死誘導のmediatorとして機能することを明らかにした。
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