ポリ(ADP-リボース)合成酵素(PARP)阻害剤はPARP1や他のPARPファミリー分子を阻害し、乳がんや卵巣がんなどで変異があるBRCA1やBRCA2などの相同組み換えに関わる遺伝子が機能しないがん細胞に対して単独で致死作用を示すことが報告されている。現在、単剤及び化学療法との併用で臨床応用が試みられている。本研究ではPARP阻害剤の作用機構を明らかにし、効果を規定する因子を同定することを一つの目的として研究を進めた。平成22年度の繰り越し金による研究として平成23年度に研究の実施を延期したPARP阻害剤の効果規定因子についてshRNAを用いた遺伝子機能阻害による検討のためのtransfection条件などの検討を行った。スクリーニング系について文献情報などをもとに検討し、レンチウイルスをベクターとして選定し、shRNAをヒトがん細胞株に導入する予備実験とスクリーニングに用いるPARP阻害剤の選択と濃度の条件を比較検討した。PARP阻害剤としては臨床試験に用いられている薬剤をおもに検討した。ヒトがん細胞株2種類を選定し、PARP阻害剤で処理し、shRNA transfectionからDNAの調製、効果規定因子候補の同定の過程を進めた。また、正常細胞に対するPARP阻害剤の効果規定因子をがん細胞と比較するためにヒト正常細胞でもPARP阻害剤の効果規定因子スクリーニング実験の条件設定を進めた。
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