研究課題/領域番号 |
22300343
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
益谷 美都子 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (60238904)
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キーワード | PARP / PARG / 放射線 / アルキル化剤 |
研究概要 |
ポリ(ADP-リボース)合成酵素(PARP)阻害剤はBRCA等の相同組み換えに関わる遺伝子が機能しないがん細胞に対して単独で致死作用を示し、臨床試験が進行しつつある。抗がん剤の増強剤として用いられる場合、あるいは単独で抗がん剤として用いられる場合も、PARP阻害剤が有効に作用しない場合が頻繁に認められる。本研究ではPARP阻害剤の作用機構を明らかにし、効果を規定する因子を同定することを一つの目的として研究を進めた。PARP阻害剤はBRCA変異を有する場合、cytotoxic作用を示した。一方、PARP阻害剤によるcytostatic作用が顕著ながん細胞株も認めた。Cytotoxic作用はDNA修復阻害による致死的DNA損傷によると考えられるが、cytostatic作用はDNA修復以外のエピジェネティック制御などを作用点とする可能性が考えられ、この点をさらに検討している。またポリ(ADP-リボース)の特異的代謝物の測定系の検討を進めた。がん細胞株においてPARP阻害によるアルキル化剤の致死増強効果を減弱させる遺伝子を同定し、その機構を検討した。siRNAによる当該遺伝子阻害下で主要なDNA修復応答に含まれるgammaH2AXの応答の減弱化をmethylmethanesulfonate処理後認めた。 また、がんの放射線及び化学療法の増強剤としてのPARP阻害剤とポリ(ADP-リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)機能阻害の影響を比較検討し、作用機序を明らかにする研究を進めた。PA:RP阻害剤とPARG機能阻害ともにガンマ線照射後、mitotic catastrophを介して細胞死の誘導が亢進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PARP阻害によるアルキル化剤の致死増強効果を減弱させる遺伝子を同定しその作用機構を検討できた。また、がんの放射線及び化学療法の増強剤としてのPARP阻害剤とポリ(ADP-リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)機能阻害の影響の比較検討が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後PARP阻害剤の効果規定因子の検索を進める。PA:RP阻害によるアルキル化剤の致死増強効果を減弱させる遺伝子について、その作用機構を論文にまとめる。がんの放射線及び化学療法の増強剤としてのポリ(ADP-リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)機能阻害に影響の機構について解析を進め、論文にまとめる。
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