レンチウイルスshRNAライブラリーを用いてPARP阻害剤と合成致死を誘導する遺伝子の機能阻害について検討した。DNMT3を高発現するヒト肺がん細胞株A549ではPARP阻害剤処理後、DNMT3bの発現低下とともにサイレンシングされていた癌抑制遺伝子FHITの発現がpromoterの脱メチル化とともに回復し、細胞増殖が抑制され、PARP阻害剤がDNMT3の発現低下を作用点とするエピジェネティック制がん剤として機能する可能性を示した。 がんの放射線及び化学療法の増強剤となるPARG阻害剤の作用機序をDNA損傷応答及び細胞死誘導について細胞株及びマウスモデルを用いて検討した。Hela細胞を用いてテトラサイクリン依存的にPARGをノックダウンできる誘導型PARG機能阻害細胞を樹立した。PARG レベルは低下しPARGのノックダウン誘導により、細胞増殖が約70%に抑制された。G1期の減少が認められ同時にS期の増加傾向を認めた。細胞増殖・細胞死に関わるAKTリン酸化レベルがわずかに亢進していたが、細胞老化には影響を与えなかった。HeLa細胞に対してはPARGのノックダウンはアルキル化剤とガンマ線照射に対して増感効果を示さなかった。これはヒト膵癌MIA PaCa2細胞で見られたアルキル化剤やγ線照射に対する増感と対照的である。PARG機能阻害下での効果規定因子の検討に本細胞株は有用と考え、shRNAライブラリーを用いて検討を進めている。
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