研究課題
今年でもこれまでに確立した神経心理学的手法および精神医学的手法を用いて、がん患者に対し、治療前、および治療終了後の高次脳機能障害について検討した。精神運動速度、全般性注意、記憶、言語、前頭葉機能について検討し、化学療法後に有意な低下の認められた患者はこれまでのところ認められなかった。また、うつ・不安傾向に関しては、がん治療前は不安が高い患者が認められたものの、治療後はがん治療に伴う種々の身体症状を勘案すると了解可能な範囲の状態であり、精神科的な治療を要する患者はいなかった。化学療法後に高次脳機能障害によると考えられる生活の質の低下を強く自覚する例は認められず、むしろ治療やその副作用による活動制限が生活の質に影響していると考えられた。分担研究者の村上はがん患者・体験者1163名に対する社会復帰状況に関するアンケート調査(無記名)を山形県内の中核病院で行い、その結果を今年度とりまとめた。がんの部位は多岐に渡っているが、全体の52%がなんらかの化学療法を受けていた。症状がなく以前と同じように社会活動を行えている人の割合は、化学療法経験者が50%未満であるのに対し、手術のみが71%、放射線療法だけが70%、手術+放射線療法が65%と、化学療法を受けている人では社会的活動に変化があった人が多いことがわかった。これはがんの進行度・部位により治療法が決まるため、その影響が大きいとは考えられるが、化学療法による副作用なども関与していると推測される。自由記載による回答では、がん治療後3年目になり再発もない患者で「何事もきちんとしないとだめな性格だったのが、なぜかできなくなり困っている」という意見もよせられ、治療後の高次脳機能障害の可能性も否定できないと考えられた。
3: やや遅れている
対象患者が十分には集まっておらず、また再発、脳への転移、死亡、転院などによる脱落例もみられるため、化学療法の高次脳機能に対する影響を検討するにはまだ不十分と考えられる。
これまでに確立した神経心理学的手法および精神医学的手法をより多くの対象者に対して適用するため、関連病院も含めて対象を募り、研究を進めていく。
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