研究概要 |
1.新たな検体セットによる癌発症リスクの評価 岡山地区の非癌対照約1,500検体の情報を基に、これまでに収集した癌患者検体約4,200検体における約50種のSNP遺伝子型解析結果を再検討した。 結果 肺腺癌、大腸癌、膵臓癌、腎癌においては、リスクに関わる遺伝子(SNP)の種類が男女間で異なることが判明した。 ・累積オッズ比(MOR)による各癌の発症絶対リスクの5段階評価 日本人の全悪性腫瘍患者の約90%をカバーする計15種の癌で、44 SNPの何れかが関与する有意相関が総計284通り明らかになり、それらの累積効果評価により、各癌種につき5段階の区分で20~700倍の生涯罹患率の差が見られた。例えば肺腺癌のリスクで最高リスクの分位(男13万人,女26万人)の生涯罹患率は男75%(4人中3人)、女39%(5人中2人)となる。 ・肝癌についてはHCV感染による肝炎・肝硬変患者と肝細胞癌(HCC)患者計468名の検体を質量分析法によって解析し、信頼性の高いリスク関連SNPを6種特定できたが、うち2種は日本人についての既報の完全な再現で,4種は新規発見であった。これらの6 SNP遺伝子型の重複による累積効果は、肝炎・肝硬変患者の繊維化の程度に応じたHCC発症危険度として明確な5段階予測ができた。また、HCC息者の予後と明らかに相関した。 2.再現性試験並びに病態関達SNPの特定 ・中国、シンガポール在住の中国人前立腺癌患者では調べた21 SNPのうち5 SNPが日本人の結果と一致した。 ・岡山地区の肺腺癌では独立の健常人/患者の2セット(各約900例)で7種のリスクSNPが完全な再現性を示した。 ・前立線癌息者のPSA値、進行度,ラテント癌、悪性度などを解析した結果、各病理学的特徴に連関したSNPを各数種類特定できた。特に、悪性度に関与するあるSNPのp値はBonferroni水準を遥かにクリアしており、大きく期待される。
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