研究課題/領域番号 |
22300346
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 憲二 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10037286)
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研究分担者 |
豊岡 伸一 岡山大学, 大学病院, 講師 (30397880)
品川 克至 岡山大学, 大学病院, 講師 (00273988)
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キーワード | 癌発症危険度 / 癌体質遺伝 / 遺伝的多型 / ミスセンス1塩基多型 / リスク遺伝子型重複 / EGF受容体遺伝子変異 / 癌の早期発見 / コホート研究 |
研究概要 |
1.再現性試験(肺腺癌): 肺腺癌に関しては、独立の患者/対照検体2セット(164/743,161/743)を用いて,単独及び2種のSNPの組み合わせ遺伝子解析を行なった。その結果、単独SNPでは修復遺伝子など6種のms-SNPが再現された。更に、16種のSNPの2種の組み合わせ、総計120通りの複合遺伝子型では、上記の2セットの独立群で総計69通りが再現され、うち40通りはBonferroni水準を満たしていた(p<3.09x10-4)。この高信頼度データを用いて1486名の健常人と325名の肺腺癌患者について層別解析すると、最高のリスクを示した群、日本人の約2%、250万人は肺腺癌の生涯罹患率8%(13人に1人)を示すことが判明した。約15%を占める最低リスク群は生涯罹患率0.5%(200人に1人)であった。なお、全平均の肺腺癌生涯罹患率は約2.5%(40人に1人)である。 2.ゲフィチニブ感受性EGFR変異陽性肺癌についての分子遺伝学的解析: EGFR遺伝子の変異検索を実施した肺癌患者388名についてSNP解析を行ない,1486名の健常人データと比較した。EGFR変異を持つ肺癌は肺腺癌が扁平上皮癌の約16倍、女性が男性の約4.5倍、非喫煙者が喫煙者の約7.9倍、高頻度であった。EGFR変異に相関するSNP遺伝子型の検索も単独及び組み合わせ遺伝子型120通りを解析した。重要なデータとしては男性ではDNAの修復に関与する遺伝子が最も深く関係し,女性ではアルコール代謝に関わる遺伝子の多型が密接に関与していた。なお、男性のEGFR変異陰性肺腺癌でもアルコール代謝に関わる別の遺伝子が高い相関を示した。以上のデータは何れもSPSS補正したもので,Bonferroni水準を満たすものである。これらの知見は肺腺癌の成因にアルコール代謝、おそらく酸化ストレスが密接に関与することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
再現性の検証に関しては、前立腺癌で一部達成され、肺腺癌に関しては予想以上の再現性が確認された。その他、病態の程度に関与する遺伝子多型で極めて興味深い知見が得られ、現在論文発表準備中である。また、当初予定していなかった肺癌におけるEGFR遺伝子変異に関する分子遺伝学的研究が大きく進展し、それに関わる遺伝子多型を特定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のこれまでの成果の再現性試験を肺扁平上皮癌、食道癌、大腸癌などについても実施する。また、岡山地区の1.500名規模のコホート研究の追跡調査を続行し、癌発症危険度の予測の的中率を検証する。この研究は来年度4年目を迎え、ある程度のデータが蓄積しつつあるので、興味深い成果が期待される。
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