研究課題
本研究では、冬季に砕氷船を用いた観測を実施した。この観測で得られたオホーツク海の海氷サンプルの化学分析を実施した結果、海氷中には高い濃度で鉄分が取り込まれており、主に粒子態で存在している事が明らかになった。これらの結果より、オホーツク海の海氷が鉄など微量栄養物質を移送するのに大きな役割を果たしている事が示された。また、海氷内の塩分と鉄分の相関が見られないことから、陸起源のダストや陸棚上の粒子態鉄が海氷内に取り込まれていると考えられた。一方で、海氷域表層水には高濃度の溶存鉄が観測されており、海氷内の粒子態鉄が何らかのプロセスを経て表層水中に溶解していると考えられた。現場海域の二価鉄濃度の測定を実施ところ、融氷水や融氷水の影響を受けていた表層海水で周囲より有意に高い濃度で二価鉄が検出された。この結果から、海氷内に存在する還元的な環境や光化学反応などによって、粒子態鉄の二価鉄への還元が起り、鉄が溶解している可能性が示唆された。海氷が融解する際には、海洋表層の主要栄養塩(特にリン酸塩とケイ酸塩)は希釈されるが、鉄分は付加される傾向にある事が明らかとなった。これは、南部オホーツク海クリル海盆付近や北太平洋の親潮海域では春季に海氷の張り出しの有無によって、微量栄養物質の供給量が大きく変化することを示しており、植物プランクトンの増殖量(ブルームの継続期間や規模)やブルームを構成する生物種組成などが変化することに直結する。このように、海氷の広がりは、極域・亜極域の栄養物質の循環に大きな影響を与え、春季の生物生産の質や量を変化させている事が示された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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