海洋植物プランクトンが主に生産すると考えられている透明細胞外重合体粒子(Transparent Exopolymer Particles。以後、TEP)は、海洋炭素循環における生物ポンプ効率を決める上で鍵となる「海水中の沈降粒子を凝集させるための接着剤」として注目されている。本研究では、外洋域の中でも特に生物生産の高い西部北太平洋親潮域の春季珪藻ブルームにおけるTEP生産の特徴とその支配要因を定量的に明らかにすることを目的としている。そのため、平成22年4月および6月に(独)水産総合研究センター・若鷹丸に乗船し、試料を採取した。4月では主にChaetoceros属およびThalassiosira属からなる珪藻ブルームが発生し、高い基礎生産力が観察された。それに伴い、表層の透明細胞外重合体粒子(TEP)濃度も、6月のブルーム終焉期と比べ、2~3倍高かった。この結果は、ブルームを形成していた珪藻種が高いTEP生産力を持っていたことを示唆する。また、TEP濃度と海水中の珪酸塩/硝酸塩濃度比との間に高い相関がみられたことから、珪藻類の栄養塩取り込み活性がTEP生産に寄与していいたことが示唆された。現在、TEP前駆体と考えられる植物プランクトンの溶存有機物の生産速度の測定を実施している。春季親潮珪藻ブルームの植物プランクトン種組成、光合成特性とその支配因子に関する原著論文を国際誌に5報発表した。
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