研究課題/領域番号 |
22310003
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中澤 高清 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30108451)
|
キーワード | メタン / 氷床コア / 濃度 / 同位体比 / 循環 / 氷期 / 間氷期 / 大気輸送モデル |
研究概要 |
本研究は、深層氷床コアを用いて過去13万年の大気中CH_4濃度を復元し、大気モデルやCH_4の同位体比を基に自然起源CH_4の循環の観点からその変動を解釈する事を目的としている。今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1. 1回の分析に使用する氷床コアの試料量を減じてCH_4濃度変動の時間分解能を向上させ、かつ同位体比と同時測定を行うために、ガスクロマトグラフをさらに改良し、精度2.5ppbでの負圧測定を可能にした。 2. 南極ドームふじ深層氷床コアおよびグリーンランドNGRIP深層氷床コアから空気を抽出して、CH_4濃度分析を実施することにより、氷期-間氷期にわたる時系列の作成を開始した。CH_4のδ^<13>CとδDの分析は多量の氷床コア試料を必要とするため、まず昨年度に完成させたシステムを用いて南極の南やまとコアとG15コアについて分析を実施し、それぞれから氷期及び間氷期の値が得られることを確認した。その後、ドームふじコアについて完新世からビュルム氷期に向かって分析を開始し、妥当な結果が得られている。 3. 掘削地点での夏期の日射量の変化に基づいてドームふじコアの過去13万年にわたる絶対年代を決定するために、抽出した空気試料について高精度のO_2/N_2比測定を実施し、その時系列の作成を行った。 4. 昨年度に開発を始めたCH_4に関する大気輸送モデルを完成させ、その有効性を検討するために、現在の条件の下でシミュレーションを行い、観測データと比較することによって改良すべき点を洗い出し、改善を図った。また、氷期に適用するために必要なモデルパラメーターを検討し、さらに感度テストを行い、解析結果に期待される不確定を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少量のコア試料からCH_4濃度及び同位体比の高精度測定を可能にし、実際に南極とグリーンランドで掘削された深層コアについて濃度分析を、また南極コアについて同位体分析を順調に行っている。また、濃度の南北差の解析に用いる大気輸送モデルも概ね完成している。
|
今後の研究の推進方策 |
ドームふじコアについてCH_4濃度及び同位体比の分析を継続し、氷期-間氷期にわたる変動の復元を行い、同位体の観点からCH_4変動の解釈を行う。また、NEEMコアの配分試料量が当初の予定よりも少ないので、今後はNGRIPコアを中心として分析を進め、ドームふじコアの結果とともに大気輸送モデルを用いて解析し、CH_4濃度の南北差の解釈を行う。
|