中国などアジア大陸からの対流圏オゾン越境汚染が日本などで重大な問題となりつつある。このような広域的な大気汚染の実態を理解するためには、衛星からの観測が有効であると考えられる。対流圏下部でのオゾン濃度を衛星からリモートセンシングで観測する手法として、可視・紫外域の両方でオゾンの同時分光観測を行うことで、両者で得られる傾斜オゾンカラム量の差から、地表付近のみのオゾン量を検出できる手法を考案し、航空機および地上での模擬観測を通じ、この手法を実証することが本研究の目的である。 夏季および冬期の2回の航空機観測を実施し、高度約8kmから、ほぼ同時に可視および紫外域での太陽後方散乱光スペクトルを測定した。その際、地表状態により大きく異なる地表反射スペクトルを推定するため、高度約500mからの地表反射光スペクトルも測定した。この観測データから可視域Chappuis帯および紫外Huggins帯での差分吸光フィッティングによるオゾンカラム量推定を実施するとともに、最適化するため観測に用いた分光計の装置関数を太陽スペクトルフィッティングにより改善している。さらに、高度約500mから測定した地表反射光スペクトルから、大気減衰を考慮して地表反射率スペクトルを求めるアルゴリズムを開発し、様々な地表条件毎に推定している。また、観測時の等価光路長を正確に推定するため、エアロゾル光学特性を考慮した等価光路長推定アルゴリズムを開発しその精度評価を行っている。
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