パルス型差分吸収分光法は、数kmの距離スケールで光源と受光部間に存在する気体分子による光の吸収量を計測する。この方法は、清掃工場の煙突等に設置され点滅している航空障害灯などの広帯域光源(発光波長域:300-900nm)を数km離れた場所に設置した望遠鏡で集光した後、分光器で検出する長光路吸収分光法である。本年度は、紫外領域(320-400nm付近)の吸収を利用したパルス型差分吸収分光法による計測システムの開発を行った。大気中の亜硝酸(HONO)は数ppbv以下の低濃度が予想されるので、紫外・可視域の分光感度特性が最適なグレーティングを有した小型リニアアレイ型検出器を選択し、パルス型差分吸収分光装置に組み込み、NO_2計測により装置の評価を行った。その結果、lppbv以下の検出感度で測定が可能であることが分かった。 HONO計測用中赤外キャビティリングダウン吸収分光(CRDS)装置の開発については、HONO標準サンプルガスの生成法について検討した。亜硝酸ナトリウム水溶液への酸添加により生成し、NOx計により濃度の定量を行い、最適条件を決定した。量子カスケードレーザーを用いた中赤外CRDS装置の組み立てを行った。HONOは1250cm^<-1>を中心にH-O-Nの変角振動に帰属される赤外吸収がある。この周波数域のスペクトル解析を行い、水等の干渉物質の影響がない吸収線の特定を行い、検出周波数を決定した。
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