大気中の亜硝酸(HONO)は、OHラジカルの発生源の一つであり、後続の大気酸化反応により生成する2次有機エアロゾルの生成・成長反応機構を理解する上ではその動態把握は重要な課題である。HONOの生成・反応機構を解明する上では、新たなHONOの高感度・高精度計測手法の開発が望まれている。本研究では、航空障害灯を光源としたパルス型差分吸収分光法技術および中赤外キャビティリングダウン吸収分光技術をこれまで環境動態把握が困難であったHONOの新しい計測技術の開発を目的とした。 平成24年度は、パルス型差分吸収分光装置および中赤外キャビティリングダウン吸収分光装置の性能評価実験結果を基に、装置の高性能化について再検討した。 パルス型差分吸収分光装置によるHONO観測については、解析手法を改良し、干渉物質である二酸化窒素の影響を軽減したスペクトル解析手法を用いることにより、若干の感度向上を図ることができた。 可搬型のHONO大気計測用の中赤外キャビティリングダウン吸収分光装置については、信号の安定化等の改良を行い、装置を完成させた。具体的には23年度の開発装置を基に、光学系と計測系を改良し検出下限についての評価を行い、大気濃度レベルのHONOの検出が可能であることを確認した。現在使用しているミラーより、より高反射のミラーを用いることにより感度をさらに向上させることができる、安定的な大気中のHONOの計測が可能であることが確認された。
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