研究分担者 |
内藤 陽子 京都大学, 理学研究科, 助教 (50324603)
林 寛生 京都大学, 生存圏研究所, 特定准教授 (70447936)
北 和之 茨城大学, 理学部, 教授 (30221914)
小池 真 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (00225343)
鈴木 睦 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主幹研究研究員 (60142098)
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研究概要 |
国際宇宙ステーションに搭載された超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)は,2009年10月から2010年4月までの約半年間,これまでにない高感度な中層大気領域の大気観測をおこない,オゾンをはじめとする大気微量成分の3次元全球分布データを得た.ここでは,SMILESデータを用い,中層大気中のオゾン化学に関わる大気微量成分の時空間変動の特徴を把握する.具体的には,重要性が認識されながらも観測がほとんどなかったBrOやClOの全球的な分布を明らかにすることによって,中低緯度におけるオゾン破壊を定量化し,さらにClOに加えHCl,HOCl,HO2の同時観測データを解析することで成層圏・中間圏の塩素化学を厳密化することを目指す.今年度は特に以下の3つの点について作業を実施し成果を得た. 1.既に入手済みのゾンデや衛星観測から得られる各種大気微量成分に関する最新・最良のデータにもとづき,SMILES観測データとの時間的・空間的な変動の整合性に注意しながら比較・検証の統計解析をおこないデータの妥当性を確認した.これらの検証結果は現在論文として取りまとめ中である. 2.O3,ClO,HCl,BrOなどの日変化の特徴を抽出すべくデータ解析を進めた.特にO3について,光化学的な理解によって比較的容易に変動の要因を把握できる上部成層圏・中間圏のみならず,力学的な輸送効果が効いてくる下部成層圏にも焦点を当てた興味深い解析結果が出てきている. 3.NCAR(米国大気科学研究センター)が提供する大気化学モデル結果,あるいは環境研究所のCCSR/NIES化学気候モデル結果を観測データと同様に処理し比較解析をおこなった.その結果,これらのまったく独立な大気化学モデルがSMILESの観測結果とよい整合性を示し,SMILESの測定および大気化学モデルの妥当性が明確になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの処理はほぼ想定したスケジュールで進み,データの比較検証作業も順調におこなわれている.また平行して,オゾン光化学を理解する上で重要な大気微量成分の時間・空間分布の解析作業も進んでいる.特に,オゾンをはじめとする分子種の日変動成分について,これまでの衛星観測からは捉えられなかった特徴が抽出され,新しい科学的な成果も出てきており,おおむね順調に進展していると判断できる.
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