研究概要 |
北極海は、海底に多くの大規模氷床削剥痕が残り、海底堆積物が撹乱されていることが、海底地形音波探査の解析結果から明らかとなっている。これまで採取したコアの年代測定の結果や採泥の際の状況から、北極海の海底堆積物の泥質の特徴が他の海域と大きく異なることがわかった。本研究のための試料採取を目的として、2010年海洋調査船「みらい」による採泥を行った。試料は、2008年度に地形探査を実施したマカロフ海盆、チャクチ海陸棚斜面,ノースウインド海嶺において実施した。氷床による削剥痕を横切るようにトランセクトを設け、谷部、山部において4-5本のグラビティーコアを採取した。2008年に山部で実施したピストンコアの解析では、1m未満に最終退氷期の堆積層が存在することから、谷部の堆積物コアの削剥痕は、堆積有機物の放射性炭素年代異常として検出出来ることが期待された。削剥痕の年代決定のためには、数cm毎に14C年代測定を実施した。ノースウインド海嶺周辺には、特に東側斜面を中心に多数の氷塊削剥痕が見つかった。今年度は、MRO8-04航海で得られた音波探査記録に基づき、それらの削剥痕の谷部、山部において採取されたピストンコアについて、バルク有機炭素の放射性炭素年代測定を実施した。また正確な層準の年代決定には、浮遊性有孔虫化石を利用する。さらに北極海では浮遊性有孔虫の保存は著しく低いことが判明したため、新たな年代プロキシーの検討を開始した。
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