研究概要 |
本研究では、北極海の海洋循環、生物生産、物質循環への温暖化影響について、過去の温暖期における大陸氷床、海氷の融解、周辺河川からの淡水供給による塩分変動、水温変動を高時間精度で復元し、近未来北極圏温暖化による環境変動予測のための知見の取得をめざす。 この目的のため、最新の古海洋復元プロキシー(過去の環境を復元するための代替指標)を駆使し、古海洋データの空白域である北極海において、現間氷期(過去1万年間の完新世)よりも一つ前の間氷期であり,現在よりも日射量が多く、温暖であった最終間氷期(12万5千年前、気温にして約2-4℃現在よりも高いと言われている、別名、スーパー間氷期とも呼ばれる)の気候変動記録を定量的に復元することを目的とする。北極海における近過去(ここでは、最終間氷期以降)における詳細な海洋変動に関する知見は大変乏しい。これまでチャクチ海陸棚斜面からノースウインド海嶺に至る水深300mから1000mで採取した柱状堆積物試料を用いて過去15万年間における海洋環境変動、特に氷床量変動に関する記録の復元を行った。詳細はBiogeosciences誌(Rella&Uchida,2011)に報告した。現在、氷床量変動の地理的分布やグローバルな気候変動とのタイミングを明らかにするため、詳細な年代測定を進めた。陸起源有機物量の変動記録の復元を行うためバイオマーカーの分析を実施した。またアラスカバロー沖、ボーフォート海の陸棚斜面、水深300mから1000mで採取したコアの分析も開始した。このコアの解析からは、陸域環境の変動をとらえることが可能と考えられる。
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