研究課題/領域番号 |
22310016
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
萩野谷 成徳 気象庁気象研究所, 物理気象研究部, 主任研究官 (40150255)
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研究分担者 |
桑形 恒男 (独)農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 上席研究員 (90195602)
徐 健青 (独)海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (50344304)
藤井 秀幸 (独)宇宙航空研究開発機構, 宇宙利用ミッション本部・地球観測研究センター, 主任研究員 (60293247)
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キーワード | 地球温暖化 / 大気-陸面間の熱・水交換過程 / 湖面凍結期間 / 放射量観測 / 土壌水分 / 湖面蒸発 / 衛星雲量 / 湖面積拡大 |
研究概要 |
本研究ではチベット高原における地表面の熱・水収支が最近30年間の気温上昇に伴いどのように変化しているのかを定量的に明らかにするのが目的である。平成23年度の研究成果は以下の通り。 ・広大なチベット高原の地表面の熱・水収支の面的な評価手法の開発を行うために、再解析データ(JRA25)においてチベット域の切り出しを行なった。 ・衛星データを活用して、チベット高原上の大きな5つの湖について凍結期間を求めその年々変動を調べた。衛星による土壌水分量マップを作成した。両方のデータは熱収支計算結果の検証用として活用できる。 ・チベットの気象台データを用いて地表面の熱・水収支の長期変動がチベット高原上の土壌水分並びに氷河や湖の面積に及ぼす影響を調べた。その結果チベット高原のシーリン湖における面積拡大の原因が降水量の長期にわたる増加の可能性であることが示唆された。 ・ナム湖における現地観測では、精密な放射データセットの構築、1時間値の放射実験式の開発、放射実験式の適用範囲を従来よりも大気水蒸気量の少ない領域に拡張、などの成果があった。更に地上の放射観測と衛星雲量データから、湖面上の対流活動の日変化が夜間活発化、日中沈静化していることを観測データから明らかにした。これらの成果は従来のチベット高原の研究ではほとんど得られていなかった。 ・2010年12月10日以降ナム湖放射計のデータが欠測になったので2011年7月から観測を再開した。更にナム湖の熱収支推定精度向上のために湖岸の気象要素(風向、風速、気温、湿度など)の観測を2011年10月から開始した。湖岸データと1.5km内陸に位置する観測点のデータの差違(2地点間の風速比や気温差)が明らかになりつつあり熱収支計算の精度向上が期待できる。3月末時点で湖岸観測の内、風向・風速が2012年1月30日以降測器の故障で欠測中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チベット高原地域における地表面の熱・水収支が最近30年間の気温上昇に伴いどのように変化しているのかを定量的に明らかにするために、(1)気象台の気象データ(気象台データ)を観測環境の変化の影響を考慮して再評価し、気温上昇の実態を正確に把握する。これはほぼ達成した。(2)土壌面、積雪面以外に、湖沼も含む地表面の熱・水収支の新たな評価手法を開発する基礎データを現地観測で取得中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り推進し、気象台データのほか、衛星データと気候モデル出力(再解析データ)を用いて、高原における地表面の熱・水収支の評価を行い、気温上昇に伴うその長期変化の特徴を明らかにする。 現地観測では測器の不具合などによる欠測がありデータに欠落が生じている。2012年度の早い段階に湖岸観測の測器を交換し、できるだけ長期間のデータの取得を目指す。野外観測では不測の事態が起こる。中国側と連絡を密に取り、データのモニターを頻繁に行なうことにより、異常事態に迅速に対応することが欠測率の低下につながる。
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