研究課題
本研究ではチベット高原における地表面の熱・水収支が最近30年間の気温上昇に伴いどのように変化しているのかを定量的に明らかにするのが目的である。平成24年度の研究成果は次のとおり。①ナム湖の精密放射観測と湖畔の現地観測を継続実施して通年のデータを取得し、大気中の水蒸気量が極域並みに少ない地域における放射実験式の検討を行った。②長期的な気温やその他の気象要素の変動が、チベット高原上における地表面の熱・水収支に与える影響を評価するために、土壌面熱収支プログラムを改良しチベット高原上の代表的な気候区の気象台で熱収支計算を実施した。その際、日射量の地形補正と日平均湿度の補正を行った。計算結果をナム湖に近いBaingoin気象台の衛星土壌水分データと比較し、土壌水分の季節変化が良く対応していることを確認した。③地表面の熱・水収支の変化がチベット高原上の土壌水分並びに氷河や湖の面積に及ぼす影響について、解析を行った。SelingCo流域では近年気温が上昇傾向、降水量と日射・長波放射量および湖面積が増加傾向である。これから湖面積拡大の原因は降水量の増加による可能性が大きい。一方、氷河域では放射の影響が地表面のエネルギー収支に対して支配的、降水量の変動が質量収支に対してもっとも敏感であった。これらの知見は湖面積拡大が降水量の増加に氷河の融解が重なったものであることを示唆している。④湖面凍結期間の衛星観測結果と熱収支計算との比較検討を行い、湖面熱収支から計算した凍結割合と衛星による凍結面積が良く対応していることを確認した。凍結期間は近年減少傾向である。⑤チベット高原における広域スケールでの気候湿潤度WI(=降水量/ポテンシャル蒸発量)の変動特性を調べるために再解析データ及び雨量格子点データを利用して熱収支式に基づくWIのデータセットを作成した。⑥3年間の研究の取りまとめと総括を行った。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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