研究概要 |
・塩酸電量滴定装置の性能試験を進めた。分析精度をさらに高めるためには,滴定終点付近のパルス電流制御をさらに高精度化する必要のあることが分かった。 ・海洋CO_2分圧の観測データに基づく診断モデル,海洋大循環・物質循環モデルによる数値シミュレーション,大気CO_2濃度変動のインバージョン法,海洋内炭酸系データのインバージョン法など,多様な手法で評価されてきた太平洋全域の大気・海洋間CO_2フラックスの評価結果を収集・解析・比較し,赤道域の評価結果の特徴や問題点を考察した。こうした総合的な比較は過去に例がなく,個々の手法を改善し,より確からしい評価値を得る上で,有意義な情報を発信できた。 ・太平洋内部の炭酸系データセットおよそ200航海分を収集し,クロスオーハー解析に基づく系統誤差評価・補正を行い,データベースPACIFICAを完成させた。系統誤差補正前のデータセットと補正係数表は,海洋情報研究センターと米国の二酸化炭素情報解析センターから公開した。また,2011年12月~2012年2月の白鳳丸KH11-10次航海にて,赤道域のCO_2分圧観測と炭酸系データ分析のための約700試料の海水試料の採取に成功し,赤道域表層から中層における海洋CO_2長期変化の解析に目途が立った。 ・米国プリンストン大学のKeith Rodgers博士と,太平洋赤道域における海洋CO_2増加過程について議論を深めた。すべての地球システムモデルの予測結果に見られる海洋CO_2分圧の季節変化幅の増加は,CO_2増加に伴う海水のCO_2緩衝能の低下に起因し.生物活動の変化や鉛直混合の変化の寄与は小さいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画した赤道域の海洋表面水と海洋各層における海洋CO_2観測と海水試料の採取を順調に実施できた。また,過去の海洋観測で取得した海洋表面と内部のCO_2データもデータベース化し,赤道域の表面水と亜表層のCO_2トレンド評価の準備が整いつつある。海洋循環・物質循環モデルによる数値シミュレーションとの連携も着実に進んでいる。塩酸電量滴定装置の開発は,試行錯誤の最中でまだ完成は見えないが,性能試験と,それに基づく改良作業は着実に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成22年12月~平成23年2月の観測航海において太平洋赤道域などで採取したおよそ800検体の海水試料のCO_2分析を,派遣研究支援員の支援によって促進し,その最新の観測データと,平成23年度までに作成したデータベースによって,太平洋赤道域におけるCO_2の長期トレンドの評価を推進する。プリンストン大のロジャース博士らの協力を引き続き得ながら,海洋物質循環モデルとの連携やCO_2トレンド解析の高度化,そして赤道域周辺のCO_2循環過程の解明を促進する。塩酸電量滴定装置については,早期に滴定電流電源の改良作業を終え,性能評価と改善作業を着実に進めてゆく。
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