研究概要 |
気候変化への強い関与が指摘されているものの、光学特性変化の過程解明が遅れている有機エアロゾルに関して、OH, HO2ラジカルを曝露し、エイジングに伴う光学特性の変化を測定する実験を実施し、とりまとめた。前年度に整備した加湿制御機能付き積分型ネフェロメータを用い、酸化前後の各種エアロゾル試料について、散乱係数の湿度依存性を測定した。また、メタンスルホン酸塩類は、酸化とは無関係に高い吸湿成長度を示すことを確かめた。これらを合わせて、酸化エイジングに加え、吸湿度の高い成分の存在度も、大気中の有機エアロゾルの光学特性とその変動を支配する要因として重要であることがわかった。これらの知見を、中国で観測されたエアロゾル散乱係数の湿度依存性に対する有機物の役割についての解釈にあてはめた。OH, HO2ラジカル測定装置の校正原理として用いられている、水蒸気の真空紫外光による光分解を応用し、対象とする有機物試料に既知濃度で発生させたOH, HO2を曝露するシステムを構築し、それを用いて、対象物質の酸化前後の特性変化を測定した。その際、発生濃度と曝露時間を変化させることにより、大気中で期待される曝露量の範囲を対象として、定量性を持たせることができるようにした。3,5-ジヒドロキシ安息香酸の酸化実験では、前年度行った定性的な光照射曝露実験の結果と比較すると、大気中での曝露量範囲では、着色による吸収度変化は小さいことがわかるとともに、HOx酸化に加えて、有機物の直接的な光酸化・分解反応が重要性を持つ可能性を指摘した。ステアリン酸についても定量OH曝露酸化実験を行ったところ、定性的な実験で得られた結果と整合的な親水性の獲得が確認された。個別有機物・大気試料を用いた不均一反応によるHO2の取り込み係数測定実験の結果についてもとりまとめ、論文発表した。
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