研究課題/領域番号 |
22310019
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (20322844)
|
研究分担者 |
高木 正博 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70315357)
角張 嘉孝 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特任教授 (60126026)
中根 周歩 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (00116633)
梁 乃申 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (50391173)
石田 佑宣 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60292140)
|
キーワード | 土壌呼吸 / 温暖化 / 森林 / 日本全国 / 炭素窒素循環 |
研究概要 |
日本全国の6サイトにおいて温暖化実験と土壌呼吸速度の観測を継続した。またリターフォールと土壌水の観測を開始した。すべてのサイトにおいて、対照区と温暖化区の土壌水の全窒素と有機炭素の濃度に統計的に有意な違いが認めらなかった。 北北海道の針広混交林では、微生物呼吸量の平均値は、対照区と温暖化区においてそれぞれ、3.69、および7.17μmol m^<-2>s^<-1>であり、温暖化区の微生物呼吸量が対照区に比べて非常に高かった(94%)。対照区のQ10値は2.85であったのに対して、温暖化区では2.99となり、温暖化処理によってQ10は上昇した。 青森ミズナラ林サイトは今年度それまでの観測点より南西に約15km移動した。9月からの観測結果によると、温暖化区のQ10値(3.06)は対照区(2.54)より大きくなった。加熱による地温上昇量は平均2.2℃であり、温暖化区は対照区に比べ微生物呼吸量が8.5%増加した。 新潟のブナ林では、加温区の地温は2℃~3℃上昇した。土壌の加熱による微生物呼吸量やQ10値の明らかな変化は見られなかった。Q10値の季節変化においても処理区間に明瞭な差がなかった。 茨城アカマツ林では対照区と温暖化区の微生物呼吸量はそれぞれ、5.13、および4.01μmol m^<-2>s^<-1>であった(一年間の平均)。Q10値は対照区では3.10、温暖化区では2.72であった。本サイトでは5年連続した加温操作によって土壌中の易分解性の有機物の量が減少したために、温暖化区の微生物呼吸量が低くなったと考えられる。 宮崎イタジイ林では、スギとヒノキの苗木に温暖化操作実験を行った結果、成長量はともに加温区で減少した。ヒノキは加温操作により蒸散速度が有意に低下したことから、スギとヒノキともに加温によるガス交換速度の低下が成長量の低下をもたらしたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各サイトにおける土壌呼吸速度の継続観測は滞りなく行われている。また今年度より各サイトにおいてリターフォールトラップと土壌水採水器を設置し、リターフォールと土壌水のサンプリングも計画通り行うことができた。宮崎大学では、計画通り苗木を対象にした温暖化実験を開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
北北海道針広混交林、青森ミズナラ林、新潟ブナ林、茨城アカマツ林、広島アラカシ優占林、宮崎イタジイ林において、15基の自動開閉式の土壌呼吸測定チャンバによる観測を継続して、土壌の長期温暖化が微生物呼吸量に及ぼす影響を明らかにし、3年間の実験結果を取りまとめる。今年度の採水回数が少なかったサイトにおいてのみ、次年度も継続して、土壌水の採水を行う。採取した土壌水分の炭素・窒素成分を分析することにより、土壌炭素の無機化が温暖化によってどのような影響を受けるのかを明らかにする。すべての観測サイトに設置したリタートラップを用いて、定期的にリターフォール量を測定し、土壌への炭素供給量を定量化する。また土壌水、リターフォールの季節変化と温暖化影響について、観測結果を取りまとめる。宮崎において開始している、ヒノキとスギの苗木を対象とした温暖化実験を継続して行い、成長特性や水分生理特性の温暖化影響を取りまとめる。
|