研究課題/領域番号 |
22310024
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
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研究分担者 |
村尾 智 産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (10358145)
中村 剛 長崎大学, 環境科学部, 客員教授 (80039586)
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キーワード | 有害元素 / 体内曝露 / 健康影響 / 食品汚染 / PIXE / 生きた植物の定量分析 |
研究概要 |
「試料採取及び測定」平成23年度には、バングラデッシュにおいて22年度とは異なる季節(乾季)において種々の食品、水、体内曝露評価のための毛髪・尿などを採取し分析を行った。尿試料に対しては、現地での簡便な調製法を考案しそれに基づき調製が行われた。その結果、人民が主に食している個々の食品のリスク評価が概ね可能となり、また汚染源の推定も可能となった。さらに乾季における食品汚染が雨季よりも深刻であることも確認された。また、毛髪・尿などの分析結果から、未だに住民の有害元素曝露が深刻であることが確認できた。モンゴルにおいては、保健省技官やNGO職員の協力を得、零細鉱業が農地に及ぼす影響などの調査が行われ、酪農製品、干肉、農作物などの採取を行い分析が行われた。また汚染の拡散を調べるため、河川水などの環境試料の分析も行われ、汚染拡散の状況が把握できた。「分析技術の開発」世良は前年度に購入したSi(Li)検出器を大気PIXEシステムに組み込み、検出効率などの測定を行い、既存の検出器と同様の定量分析を可能とした。だが東日本大震災のため装置の一部が破損し、「大気2検出器同時定量分析法」のシステムは完成したものの、分析法自体の確立は24年度に持ち越された。22年度に開発が完了した「生きた植物試料に対する定量分析法」を応用し、外部から溶液の形で植物に投与した重元素の植物内動態観察を行った。その結果、As、Ga、Brなどの投与後の植物内の動態が観測されたのに加え、他の元素濃度も変化を示すことが明らかにされた。本法は十分に、農作物中の有害元素動態観察に応用可能であることが確認された。 「成果の公表」23年度の成果は、Bio-PIXE国際シンポジウムなど複数の国際学会で報告を行い、国際誌にも複数の論文が公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度に方法論開発は順調に進み、23年度には「大気2検出器同時分析システム及び方法」の開発完了の予定であったが、東日本大震災による機器破損によりやや遅れ、方法論の完成は24年度に持ち越された。しかし現地における試料採取は順調に完了し、分析も進み、貴重な結果が得られつつある。生きた農作物中の重元素動態の観察も世界で初めて可能となるなど、順調な進展だったと評価される。
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今後の研究の推進方策 |
1.測定を行った種々の食品中の有害元素濃度を系統的に整理し住民の総曝露量を算定する。 2.健康影響へのリスク評価を行い総曝露量軽減のための方策を検討、結果を住民に通知する。 3.「大気2検出器同時分析法」の開発を行い、農作物中の全元素の動態観察を可能とし、可食部への取り込みを最小限に押さえる農耕法などの検討も行う。 4.これらの成果をアジア諸国及び世界へ向けて普及させる。
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