研究概要 |
本研究では、提案する統計干渉法に基づいて,秒オーダーの極短時間における植物の葉などの成長挙動をサブナノメータの分解能で連続的にin situ計測できるシステムを用いて,新しい植物の環境ストレスモニタリング技術を確立することである。具体的な環境汚染物質としてオゾンに焦点を絞り,イネなどの作物に対するオゾンストレスを早期にかつ定量的に評価することを目的とした実証研究をおこなった。 1.植物成長の極短時間形態応答の計測システムの構築に関しては、ノートパソコンを基本としたコンパクトで可搬性のある計測システムを構築し同時に計算速度の向上も図っている。また,必ずしも本計測装置に精通した者でなくとも簡便に操作できるよう扱いやすい計測ソフトウェアをGUIを用いて新規に構築した。 2.植物の極短時間成長動態と環境ストレスおよび長期的生育状態予測の指標としての有効性の検証の検証に関しては、作物植物としてイネに注目し、オゾンに対して収量の点から比較的耐性の弱い品種と強い品種であるコシヒカリとフサオトメを対象として実験をおこなった。120,240ppbのオゾン濃度で3時間の暴露実験を3日間繰り返した。葉の成長のナノメータ揺らぎの標準偏差は、両品種ともオゾン濃度に対応して明らかな低下を示した。また、オゾン抵抗性の強いフサオトメではその低下はコシヒカリに比べてほぼ半分であった。また低濃度の暴露では、24時間後に回復傾向も確認することができた。以上のことから本研究でオゾンストレスの指標として注目している成長のナノメータ揺らぎに基づいて品種間の耐性の差および濃度に依存した変化を確認することができた。このような短時間でのオゾン暴露に対して従来法であるクロロフィル蛍光法では変化を検出できなかった。本手法は従来法に比べて感度が高いことから短時間(1時間程度)の測定によりストレス評価が可能であり実用上意義がある。
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