研究課題/領域番号 |
22310029
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
川邉 みどり 東京海洋大学, 海洋科学部, 准教授 (80312817)
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キーワード | 沿岸域管理 / 基盤構築 / 資源管理 / 地域共同体 / 持続的発展のための教育 |
研究概要 |
本研究は「地域共同体による資源管理」を核として「共同管理」から「総合的な沿岸域管理」へと段階的に管理形態を発展させるための基盤構築の手法開発を目的とする。平成23年度は3か所(1.芝浦・港南地区(東京都港区)、2.厚岸町、別海町~標茶町(北海道)、3.福島県いわき市)を対象として以下のように研究を実施した。 1.芝浦・港南地区(東京都港区) 「東京海洋大学江戸前ESD協議会」および港区芝浦港南地区総合支所との協働で「江戸前みなと塾」を開催した。一般公募で参加した人々とともに、「第I部学びのデザイン」(全3回)では「知識の共有」・「体験の共有」・「理解の共有」にもとづく協同的アプローチによって江戸前の海について学ぶプログラム案を設計し、「第II部学びのアクション江戸前漁業の世界を知ろう」では、第I部で作成した案を原型とするプログラム「江戸前漁業の世界を知ろう」を実施し、東京湾管理への基盤構築のありかたを提案するためのデータを得た。 2.厚岸町、別海町~標茶町(北海道) 地域の異業種の人々が地域資源について学び合い、その活用について話し合うといった学びのプロセスを実施する上での課題についての調査および町役場職員の方々のグループインタビューをおこなった。また、根室関内の河川流域協議会の動向を調査し、とくに西別川流域環境保全の経緯について調査した。 3.いわき市(福島県) 東日本大震災の津波被害を受けた福島県では、漁港は迅速に復興したにもかかわらず、原発事故による放射性物質汚染のために沿岸漁業の自粛を余儀なくされており、沿岸漁業と底に依拠する地域の将来に対する懸念が高まっている。この状況に対して、生産者・流通者・消費者も参画するリスク・ガヴァメントの実現をめざし、サイエンスカフェを毎月開催し、「知識の共有」と「理解の共有」を図っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東京湾及び北海道の調査は申請予定どおりである。マレーシア・ペナンについてはデータ分析の進捗が遅れているが、東日本大震災被災地である福島県いわき市において多数の関係者の協力を得て調査をおこない、サイエンスカフェ運営に関わることができたことから、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次の3点を今後の推進方策とする。 1.文献調査をさらに進め、とくに「関係者の参加」および「Social Learning」について、研究事例を学術雑誌から収集し、基盤構築の課題、手法、発展段階と指標を分類・体系化することで、評価の枠組みをつくる。 2.調査地でのワークショップおよびインタビュー・データが大量に未整理であることから、この分析を集中的におこない、1と対照させながら、総合的な沿岸域管理の基盤構築手法に関する研究の方向性を検討する。 3.当初想定した研究対象地を東日本大震災被災地に替え、グループインタビューおよびワークショップを開催しながらアクション・リサーチを進める。
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