研究課題/領域番号 |
22310030
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金子 慎治 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (00346529)
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研究分担者 |
藤倉 良 法政大学, 人間環境学部, 教授 (10274482)
市橋 勝 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (10223108)
後藤 大策 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 准教授 (80432847)
小松 悟 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教 (80553560)
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キーワード | 太陽光発電 / 技術開発 / 国際協力 / 気候変動 / 援助政策 / 需要分析 / 色素増感太陽光発電 / バングラデシュ |
研究概要 |
バングラデシュ農村部では農村電化の一手法として、SHS (Solar Home System)と呼ばれる、太陽光電池パネルを用いた住居用電化パッケージの普及が急速に進む。本研究では農村部での質問票調査を通じ、SHS導入による住民の生活水準の改善への貢献度を定量的に評価した。分析の結果SHSを導入した世帯では、灯油消費量の大幅な減少がみられたこと、また携帯電話の利用やテレビの視聴という便益が生じたことを示した。更にライフスタイルの面においても、電灯が利用可能になったことで、特に子供の勉強に対する便益が大きいことが明らかになった。SHSを現在所有していない世帯に対して、SHSの価格が低下した際の購入希望を尋ねたところ、価格が30%低下した際は、60%以上の住民が新規にSHSを購入することを示した。 SHS導入の決定要因を分析するために、SHS導入世帯・非導入世帯の両方にアンケート調査を実施し、決定要因を抽出した。分析の結果、世帯収入だけではなく、住民の所持している充電バッテリーや灯油使用量,携帯電話所有台数が、SHS導入に対して有意に影響を及ぼしていることが明らかになった。またSHS導入世帯間において、SHSの選択に対する意思決定要因を分析したところ、収入が多いほど、灯油使用量が多いほど、更に子供の人数が多い世帯数ほど、大きなSHSを購入する可能性が高いことを示した。 研究を通じ、現在SHSで生み出されるインパクトは主に生活改善が中心であり、更に途上国での太陽光発電の市場を持続的に拡大してくためには、太陽光発電によって所得創出効果を生み出す規模の電化を実現することが不可欠であり、そのためには更なる価格低下(同価格での模拡大)が求められる。そのダイナミクスを創造し生かしていく中で、途上国の農村開発・持続可能な発展に導く仕組みづくりが求められると結論付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内に達成するべき項目をおおむね達成しているもの、色素増感太陽電池技術の開発見通しを分析し、コスト削減予測モデルを構築するためには、更なる細かい議論が求められるため。
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今後の研究の推進方策 |
コストブレークスルーを狙った技術開発段階の次世代型太陽光発電技術を途上国で市場化するという国際協力モデルをアジア最貧国のひとつであるバングラデシュとわが国の間で設計し、その双方向的かつ多元的な便益創出のメカニズムを解明するために、バングラデシュではとりわけ携帯電話の普及と利用との関連に着目した調査を実施するとともに、得られたすべての結果を総合し、国際協力モデルの設計を行う。
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