研究課題/領域番号 |
22310031
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
馬越 孝道 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 准教授 (30232888)
|
研究分担者 |
江原 幸雄 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10002346)
渡辺 貴史 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 准教授 (50435468)
小野 隆弘 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 教授 (60108628)
深見 聡 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 准教授 (20510655)
|
キーワード | 雲仙 / 地球温暖化 / 地熱 / ジオパーク / 温泉バイナリー発電 / 温泉廃熱利用 / 地域再生 / 自然エネルギー |
研究概要 |
雲仙市小浜温泉における未利用温泉熱を利用したバイナリー発電の実現と、それを核にした地域力再生プログラムの開発に向け、地元温泉関係者と定期的に協議を行うとともに、長崎大学に電力事業者を招き島原半島のスマートコミュニティについての研究会を実施した。また2012年3月14日には、「ジオパークにおける低炭素まちづくりと地域再生」の第2回シンポジウムを小浜温泉で開催し、本研究成果の報告とともに、外部の事業者を招き全国の温泉発電の現状等について市民に紹介し、地元の意見を聴取した。本研究は地球科学と政策科学の2グループからなっており、各グループにより行われた研究の成果は以下のとおりである。[地球科学グループ]1.島原半島の地熱源である雲仙火山のマグマに関して、1991年の溶岩ドーム出現前後に発生した地震のデータをもとに、火口直下のマグマシステムのモデルを構築した。2.雲仙火山の地熱系について、観測結果をより正確に表現できるモデルを熱水系の数値シミュレーションにより求めた。その結果、小浜温泉の下方に熱を供給する構造が発達している可能性が示唆された。[社会・政策科学グループ]1.島原半島ジオパークの持つ認識度の特性を、九州内のジオパークでの観光客へのアンケート調査と島原半島ジオパーク事務局への聞き取り調査から把握し、ジオツーリズムモデルの検討を地域多様性の視点から深めた。2.地熱エネルギーを活かした観光温泉地の景観像を検討するために、長崎県小浜温泉を対象に湯煙景観(地中から湧出する水蒸気及びその他のガスから形成された眺め)の特性を明らかにした。その結果、湯煙景観には、発生地点数、発生形態、そして空間布置から、いくつかのパターンがあることが明らかになった。湯煙を活かした景観像の構築にあたっては、こうしたパターンを踏まえたものにすることが望ましいことを提言した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地熱・温泉利用を進めるには地元市民、泉源所有者、行政等の理解が不可欠であるが、本年度、地元での協議、シンポジウムを通じて本研究グループとの連携が強化され、目的や課題の共有化が達成できた。その結果、小浜温泉での温泉バイナリー発電の実現に向けて具体的検討が進んだ。また、雲仙火山の熱的構造、ジオパーク、地域づくりに関してもそれぞれ新たな知見が得られており、おおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
小浜温泉における温泉バイナリー発電について、地球科学と政策科学の協同、および地元との協議によりその事業化にむけた問題点の洗い出しと計画づくりを進める。またこれを核とした地域の経済・生活の総合的な活性化策について検討する。さらに、豊富な自然資源を活かした島原半島のスマートコミュニティ構想を、国内外の事例も参考にしつつ検討し、その実現に向けた課題を明らかにする。これらに加え、こうした取り組みを地域に浸透させるための可視化の方法や仕組みについても焦点を当てて研究を進める。
|