研究課題/領域番号 |
22310032
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
八巻 一成 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, グループ長 (80353895)
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研究分担者 |
比屋根 哲 岩手大学, 農学研究科, 教授 (90218743)
藤崎 浩幸 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (30209035)
柴崎 茂光 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (90345190)
林 雅秀 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (30353816)
金澤 悠介 立教大学, 社会情報教育研究センター, 助教 (60572196)
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キーワード | 社会ネットワーク / ガバナンス / 環境保全 / 農山村 / 地域資源管理 / 協働 / リーダーシップ |
研究概要 |
岩手県葛巻町における地域開発の成功要因を、中心性(centrality)、結束(bonding)、橋渡し(bridging)の3つの人的ネットワーク構造に着目し、明らかにした。分析は、関係者への聞き取り調査、収集した文献、資料をもとに行った。葛巻町における地域づくりの起点となったのは、1969年によって開始された北上山系開発である。当時のT町長は小岩井農場に支援を求め、1976年に設立した畜産開発公社の初代専務理事を迎えた。それとともに、町役場職員のN氏を出向させ、役場と公社との連携を強化した。一方、T町長は「ミルクとワインのまち」として地域おこしを進めるため、1980年、ワインづくりの権威であるSH氏のもとに町役場職員のS氏を研修で派遣し、その後1986年に「くずまきワイン」の操業を開始した。さらに、1993年には宿泊施設グリーンテージを開業し、支配人には町づくり委員会で実績のあったO氏を就任させた。1999年には、牛乳生産を通じて関係があったコンサルタントのM氏を介して、風力発電施設が建設された。このように、葛巻町ではT町長のリーダーシップによって、酪農を中心とする町づくりがスタートし、その後開始された事業に町役場の職員を送り込むなど、町と各事業間の強い結束のもとに運営が進められ、結束型のネットワーク構造が形成された。また、役場職員でありながら出向経験の長いN氏、S氏がその後の町長に就任しており、町長を中心とする役場と各事業の強い結束が維持されてきている。一方、町内から調達困難な支援については、外部との橋渡し型ネットワークを有効に活用しながら入手しており、町長および役場による中心性の高いネットワークを一貫して維持しながら、役場と第三セクターとの人事交流を通した強い結束、および外部との橋渡しによるネットワーク構造が存在していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葛巻町における調査については、ほぼ順調に進んでいる。その一方、比較対象地域については、地理的、社会的条件が類似する北上山地地域から選定する方が、人的ネットワークの意義についてより詳細に分析することが可能となると考えられたことから、最終年度に新たな比較対象地域を選定し調査を実施することとする。
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今後の研究の推進方策 |
研究申請時に想定していた以上に多くの興味深い知見が見いだされたことに加えて、比較対象地域の変更が生じたことから、研究をさらに深化させていくために、新たな研究助成の申請を行う予定である。
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