研究課題/領域番号 |
22310035
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 智子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70402922)
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キーワード | 細胞微小環境 / 放射線 / メダカ / 組織幹細胞 / 組織特異的発現 / 細胞周期チェックポイント / 増殖制御 / 損傷応答 |
研究概要 |
ゲノムDNAに損傷が生じた時、細胞では細胞周期チェックポイントが働くことによりゲノム安定性が維持されている。この「細胞周期チェックポイント」機構は、あらゆるタイプのゲノム損傷に対する生物の基本戦略である事が幅広く受け入れられている。一方、個体、体組織での損傷応答では、組織を構成する各細胞は、各々の「細胞系譜」と「微小環境」により固有の増殖制御(細胞周期制御)を受けており、各細胞の損傷応答はゲノム損傷シグナルと細胞固有の増殖制御シグナルとのクロストークとして理解されなければならない。組織幹細胞は、各組織・臓器への多分化能を持ち、組織全体のホメオスタシス維持の機能を担っている。当然の事ながら、損傷からの組織レベルの回復においても重要な役割を果たしている。本研究では、組織幹細胞における、ゲノム損傷シグナルと「微小環境」からの増殖シグナルのクロストークを解析する系の確立を目指している。 組織幹細胞をマーキングするために、腸幹細胞マーカーとして報告のあるMusashi遺伝子全長を含むメダカBACクローンの第2エキソンをrecombineeringでKusabira Orange 1(KOr,MB2)に組み替えたコンストラクトを導入したメダカ胚に導入した。現在、KOr陽性胚を育成中で、これらの魚が産卵を開始しだい組織幹細胞マーカーTGメダカのスクリーニングを開始する。 微小環境制御系解析のための、Wnt経路のFrizzled遺伝子群の変異体作製を開始した。変異体の作製はTILHNG法でおこなった。次世代シークエンサーを用いたメダカTILLINGライブラリーの一時スクリーニングはライブラリーの半数まで完了し、現在、ダイレクトシークエンシングによる二次スクリーニングを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織幹細胞マーカーメダカラインの作製の際、遺伝子導入したメダカが育成中に集団で水かび病にかかり、遺伝子導入からのやり直しをしたが、おおむね予定通り進んでいる。また、Frizzled遺伝子群の変異体作製ではTILLIHNGライブラリーの次世代シークエンサーによるスクリーニングで、次世代シークエンサーのデータ解析に時間がかかっているが、おおむね予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Frizzled遺伝子群の変異体作製は変異体特定後、ゲノムのクリーンアップのために4代以上の継代が必要で時間を要するため重点的に進めていく。組織幹細胞マーカーラインができ次第、腸管の凍結切片を作成し腸管内での発現パターンを観察し、マーカーラインとして使用できるかの評価を行う。同時に、ATMATR,p53変異体との掛け合わせも進めておく。また、このマーカーラインを用いてレーザーDissectionの技術習得も進めておく。もし、このラインがマーカーラインとして使用できなかった場合CD133(Promimin-1),Nucleostemin Sox2, Lgr5についても、同様なコンストラクトを作製し同様の作業を行う。
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