研究課題/領域番号 |
22310040
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉永 淳 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (70222396)
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研究分担者 |
林 祐太郎 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (40238134)
小島 祥敬 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60305539)
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キーワード | 肛門性器間距離 / 精液指標 / ピレスロイド / パラベン / フタル酸エステル / バイオマーカー |
研究概要 |
名古屋市立大学病院においては、尿道下裂、停留精巣患児および対照児(上記以外の疾患で受診した児童)について平成22年度に加え、平成23年度はさらに25例の症例を追加し肛門性器間距離(AGD)を測定した。尿道下裂は亀頭型、陰茎型、陰嚢型、停留精巣は片側、両側例を認めた。AGDと上記疾患との間には現時点では有意な関連が見出されていない。 研究協力者の都内産婦人科において、H22年度以降リクルートした妊婦から出生した新生児のAGD測定を継続した。一部の妊婦の尿中フタル酸エステル及びイソフラボン代謝産物[ダイゼイン(DZ)、エクオール(EQ)]、パラベンなどの濃度をLCMSMS及びGCHSにより測定し、AGDとの関連を予備的に調べた(n=53)ところ、フタル酸ジエチルヘキシルの代謝産物濃度とAGDの間に負の関連が認められた。イソフラボン、パラベン曝露とAGDの間には関連が見られていない。 研究協力者の都内産婦人科(不妊相談)において採取した42名の男性の尿中ピレスロイド系殺虫剤代謝産物(3-PBA、イソフラボン代謝産物濃度を測定し、精液パラメータとの関連を調べた。精子運動率と3-PBA濃度・EQ濃度との間に、精子濃度とDZ濃度との間に、それぞれ有意な負の関連が見出された。 現時点での知見として、フタル酸エステル類、ピレスロイド系殺虫剤のような人工化学物質及び天然のエストロゲン様物質であるイソフラボン類とも、日本人の一般公衆の曝露レベルであっても、男性生殖器形成(AGD)、生殖機能(精液パラメータ)に有意な負の関連を持つことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、肛門性器間距離を影響指標とした化学物質による男性生殖器形成への影響評価をわが国で初めて着手し、途中経過ではあるがフタル酸エステル曝露による有意な影響を見出している。また、小規模ながら精液指標を影響指標とした化学物質曝露の影響評価を実際に行い、ピレスロイド系殺虫剤曝露との関連を見出し、成果を投稿した。どちらもほぼ予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
新生児のAGDを影響指標とした化学物質曝露の影響評価は今後も継続する。成人男性の精液パラメータを指標とした化学物質曝露の影響評価については、研究協力者の都合によりH23年度以降は対象者のリクルートができず、小規模な予備調査となったことがやや問題であったが、他の協力者から成人男性の精液パラメータデータと尿の提供を受けることが決まり、分析に着手したところである。
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