研究課題
(1)10日、3カ月、12カ月齢のラット海馬と血清のエストラジオール、テストステロン、プロゲステロン濃度を質量分析によって定量した。10目齢から3ヶ月齢にかけて、海馬内で3種のステロイド濃度が全て上昇した。テストステロン、プロゲステロン濃度は血中濃度と良く相関していたが、エストラジオールは、血中より脳内の方が高かった。また、脳内のテストステロン濃度が変動してもエストラジオール濃度は変化せず、脳内での合成が独自に調節されていることが示唆された。10日齢ラットの脳内エストラジオール濃度の分布を、RIAで調べた。海馬は小脳や大脳の2倍以上高かった。同じく10日齢ラットのステロイドホルモン合成酵素のmRNAを定量したところ、エストラジオール合成酵素であるP450aromのmRNA量が海馬だけ5倍以上有意に高く、海馬でエストラジオール合成活性が高いことが示唆された。(2)ラットにトリメチルメズを腹腔内投与し、脳への影響を調べた。その結果、8mg/kg以上を投与すると、1週間後に海馬のCA3領域のニューロンの特異的な脱落が観測された。トリメチルスズの投与は、体重の減少、副腎重量の増加、新規環境での自発運動量(オープンフィールド実験)の増加を引き起こしたが、脳や海馬の重量には影響しなかった。海馬のエストラジオールを定量したところ、溶媒投与ラットに比較してエストラジオール量が約2倍に増加しており、海馬へのダメージによって、海馬を保護するエストラジオールの合成が活性化されたと推定した。(3)ラット海馬スライスにトリブチルスズを作用させ、その神経毒性に対するステロイドホルモンの影響を調べた。トリブチルスズ3-10μMを24時間作用させると、海馬全体の細胞死が引き起こされた。エストラジオールやプロゲステロンを前もって投与しておくと、その細胞死が軽減され、保護効果が見られた。
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General and Comparative Endocrinology
巻: 171 ページ: 28-32
J Clin Endocrinol Metab
巻: 95 ページ: 2296-2305