研究課題/領域番号 |
22310041
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 岳 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (30192397)
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研究分担者 |
坂田 省吾 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (50153888)
古武 弥一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (20335649)
石田 敦彦 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (90212886)
椋田 崇生 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (60346335)
石原 康宏 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (80435073)
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キーワード | ニューロステロイド / エストラジオール / プロゲステロン / トリブチルスズ / トリメチルスズ / メチル水銀 / 海馬 |
研究概要 |
(1)質量分析による発達期の脳内ステロイドの精密測定がほぼ終了した。 これにより、脳内のステロイドの正確な濃度の経時変化が、初めて明らかになった。質量分析の感度の問題で、すべての週齢についての脳内分布は出せなかったが、所期の目的はほぼ達成できた。 (2)海馬スライスを用い、トリブチルスズ、およびメチル水銀の神経毒性が、エストラジオールに加え、プロゲステロンによっても保護されることを明らかにした。プロゲステロンによる保護作用は、プロゲステロンレセプターを介しておらず、アロプレグナノロンに変換されて発揮される。なお、プロゲステロンはスライスでは顕著に合成されておらず、血中由来のプロゲステロンが脳内でアロプレグナノロンに変換されて保護作用を発揮しているようである。 (3)ラットへの腹腔内注射、およびラット海馬スライスを用いて、トリメチルスズ、トリブチルスズ、メチル水銀の毒性の細胞特異性を検討した。 これによると、それぞれの有機金属は異なる細胞に対して毒性を発揮した。その原因は不明であるが、脳内ステロイド以外の要因が関与していることは確実である。脳内ステロイドは神経毒性の主要な調節因子であるが、それがすべてではないことを示唆している。 (4)飼育環境で神経毒性に大きな差異が見られた。 トリメチルスズの腹腔内投与の際、ラットを単独飼育、複数飼育、豊かな環境で飼育すると、神経毒性に差異が見られた。飼育環境は脳内ステロイドに影響を与えることが知られているが、それだけでは説明できない部分があり、神経毒性の発現には脳内ステロイドと他の要因とが複雑に関与していることを示唆する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内ステロイド濃度の定量は、予定通りほぼ終了した。やや進捗が遅いところ(mRNA量の脳内部位特異性など)もあるが、予想外に進んだところ(トリブチルスズによる細胞毒性の分子機構、飼育環境による細胞毒性の差異の発見)もあり、差し引きするとおおむね予定通りの達成度であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り、各神経毒による細胞死の分子機構と、それに対するステロイドの保護作用の分子機構を追求していく。 また、当初は脳部位ごとのmRNA量を定量する予定であったが、脳内ステロイドの質の高い濃度データが得られたことで、より間接的な指標であるmRNAの定量の重要性が薄れた。24年度の研究の進捗によっては、この測定を省く可能性がある。
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