研究概要 |
今年度は、ダイオキシン類の中でも最も毒性が強く難分解性の2,3,7,8- tetrachlorodibenzo- p- dioxin(TCDD)の肝臓蓄積量を減少させ、尿中への排泄を促進する各種化合物をキー化合物とし、主に(1)これらの化合物投与時の肝臓中および尿中TCDD代謝物の同定、(2)肝臓ミクロソーム分画や培養細胞を用いたin vitro系におけるTCDD代謝の検討と評価系の構築、を試みた。尿中に排泄させたTCDDの化学型についてHPLCによる解析を行ったところ、ほとんどがリテンションタイム31~34分である未変化体として検出されたが、21分のあたりにC1基が水酸基に置換したものと考えられる代謝物の存在も確認された。またTCDD以外のダイオキシン類としてPCB126についても尿中排泄に関する検討を行ったところ、TCDDを尿中に排泄する各種化合物は、雄マウスにおいてPCB126の尿中への排泄促進効果を示した。しかし雌においては、この効果があまり認められなかった。これらの結果をin vitro系においても再現するために、雄性マウスの肝臓ミクロソーム画分とTCDDをインキュベートして得られたものについて同様の分析を行ったところ、未変化体のみが検出され、代謝物は検出限界以下であった。これはTCDDの尿中排泄には肝臓中の肝臓ミクロソーム画分は関与していないと考えられる一方で、代謝物の検出感度の問題である可能性も考えられた。今後は代謝物を同定すると共に、その検出感度を向上させてさらに詳細な検討を行う必要があると考えられた。
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