研究概要 |
申請者らは,落差2m未満の極低落差の水力エネルギーから高効率で発電できる超小型エコ水車の開発を目的とする.極低落差を利用する水車の研究において,市場ニーズに見合う水車効率,耐久性および経済性を実現することが課題の一つである.本研究では水車タービン材料表面の高機能化に着目した.流体機械の基本概念に,化学系ものづくりのアプローチを融合することにより,水車効率,耐久性,耐蝕性を向上することを目指している.市場ニーズを満たすエコ水車発電システムを実現するために,大きく分けて(1)発電効率向上研究と,(2)ランナの耐久性向上研究に取組む.本年度は,(1)に関して,ランナに流入する水流の方向制御手法の検討と,機能性表面のランナブレードへの導入,さらに,機能性表面を導入したランナにおける水車性能の評価を実施した.水流方向制御手法については,コアンダ効果を利用した手法の有効性が確認され,流路曲率半径が水車特性に与える影響を評価した.その結果,曲率半径が小さくなると水流の剥離が生じやすくなるものの,方向制御による水流速度の低下は最小となり,水車効率が高くなることがわかった.次に,ランナブレードへの機能性表面への導入について検討し,親水性およびはっ水性の導入に成功した.また,機能性表面が水車性能に及ぼす影響の検討においては,試作ランナの製作誤差が水車性能におよぼす影響を排除するために,一つの試作ランナに対して,機能性表面を導入した厚さ0.1mmのPETフィルムを貼りつけることではっ水時,あるいは親水時の水車性能を評価し,機能性表面未導入時との比較も実施した.その結果,抗力型あるいは衝動型水車については,機能性表面が水車性能におよぼす影響は認められなかった.
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