研究課題/領域番号 |
22310054
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石井 亮 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (40356431)
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研究分担者 |
長縄 竜一 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 研究員 (40357637)
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キーワード | 環境材料 / 有害化学物質 / ガスセンサ |
研究概要 |
揮発性芳香族化合物(以下AVOC)用ガスセンサに資する規則性2次元ナノポーラス材料からなる検知膜の創製のため感度向上に寄与する2つの課題;(1)規則性2次元ナノポーラス材料を用いた均一膜形成条件の最適化と多層化、(2)新規規則性ナノポーラス材料であるアミノフェニル部位導入型材料の合成と高表面積化、について検討を行った。 (1)の課題については、均一膜作成のため各種膜作成方法を用いた膜形成の検討を行った。具体的には、キャスト法や引き上げ法、溶液中での吸着法などについて検討した。その結果、水晶振動子電極を材料粒子の懸濁液に浸積させ、その後粒子の沈降によって電極上に粒子を積層させる方法がもっとも効果的に均一膜を形成できることが分かった。さらに、電極と当該粒子との結合を安定化させるための電極の前処理法についても検討した。その結果、アミノエタンチオールを電極に被覆した後、上記方法により膜を形成させると感度が向上することが分かった。この方法により、トルエンガスの感度を検討したところ、センサ感度は1.8ppm/Hzであった。これは、去年得られた感度(4ppm/Hz)より2倍程度高い値である。他方、材料粒子の多層化については、感度について向上が見られなかった。 (2)の課題については、アミノフェニル部位を有する新規シラン化合物材料の合成を行った。アミノ基とアルデヒド基の結合形成反応(イミン結合)を利用することにより、アミノフェニルシラン化合物とテレフタルアルデヒドの両端にアミノフェニルシラン化合物を結合した化合物を合成した。得られた化合物を層状化合物であるアイラライトの層間に架橋させることにより、層間距離2.52nmを有する新規アミノフェニル部位導入型材料を合成することに成功した。他方、本材料の比表面積は30m2/gであり、既存のビフェニル型の規則性ナノポーラス材料の比表面積(500m2/g)に比べて小さかった。これはアミノフェニル部位の層間導入量が多すぎるためである。今後、導入量の制御により比表面積を向上させる予定である。さらに、アミノフェニル部位導入型材料の電極上での膜化を行うことにより目標である既存の感度の100倍以上(値にして0.08ppm以上)の達成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本提案では計画2年目の目標値を0.2ppm/Hzとしていたが、達成した値は1.8ppm/Hzであり目標を達成できなかった。これは、予定としていたアミノフェニル部位導入型材料の合成について遅れが生じているためである。遅れが生じた理由は、東日本大震災により装置や設備が損壊したため研究が5カ月中断されたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、アミノフェニル部位導入型材料の多孔化について研究を加速する。また、平成23年度の検討により、電極と材料粒子との結合が感度向上に寄与することが分かったので、結合を促進するための電極の前処理やその後の粒子の膜化方法について検討して目標値達成を目指す。
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