研究概要 |
本研究,以下に示す4つの小目的より構成される。すなわち, 1. 自発吸水が可能な共連続構造を有する高分子多孔質媒体を自在に棒状,板状で作製する。 2. 高分子表面にカチオン性基および剛直な部位を配置し,固体表面抗菌性を発現させる。 3. 多孔性高分子に環境汚染物質(溶液,ガス状)を吸着可能な認識部位を構築する。 4. 光触媒をハイブリッド化し,補足物質の光分解による媒体自浄作用を付与する。 これらの目的に基づき,本年度は下記あ3つの課題に対して成果を得た。予定に対する達成度は90%程度である。 1. ジエポキシ化合物とジアミン(モノマーと呼ぶ)の組合せ,重合条件等を種々変化させ,毛細管現象に基づく自発給水に最適なエポキシ樹脂多孔体のミクロ細孔構造の制御と,棒状あるいは板状の形状をもつ共連続構造エポキシ樹脂多孔体を調製する手法を確立した。具体的には,重合温度を高くすることで,より細孔の小さなエポキシ樹脂多孔体が得られることが明らかとなった。また,無孔性のエポキシ樹脂では,同じモノマーを用いて合成した場合でも,多孔性のエポキシ樹脂と比べて抗菌性が低下することが明らかとなった。このことは,本エポキシ樹脂の抗菌性の発現には,予想どおり「孔」の存在が極めて重要であることが示唆している。 2. 重合で得られる3級アミンをそのまま,あるいは4級化することによる抗菌機能への影響について詳細に検討し,その結果,4級化を行うことで抗菌性能が大幅に向上する傾向があることが明らかとなった。しかしながら,4級化に用いる試薬の違いと,抗菌性能の有無については,現段階では明確な関連性が得られていない。 3. 疎水性有機化合物,親水性天然物,重金属等の環境汚染物質を水中や気相から捕捉することが可能な多孔体「表面」の認識部位(疎水性,親水性,イオン交換機能)の構築を行い,その結果,まず,第一に水中の疎水性化合物に関して,エポキシ樹脂多孔体は効率よくそれらを吸着除去できることが明らかとなった。つまり,エポキシ樹脂多孔体は適度な疎水性と,水に充分になじむ親水性を有している興味ある事実が明らかとなった。
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