研究課題/領域番号 |
22310056
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
細矢 憲 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00209248)
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キーワード | 抗菌 / 光分解 / 水質浄化 / 高分子多孔体 / 自然の機能 / エポキシ樹脂 / 吸着 / 分子認識 |
研究概要 |
本研究は,以下に示す4つの小目的より構成される。すなわち,1.自発吸水が可能な共連続構造を有する高分子多孔質媒体を自在に棒状,板状で作製する。2.高分子表面にカチオン性基および剛直な部位を配置し,固体表面抗菌性を発現させる。3.多孔性高分子に環境汚染物質(溶液,ガス状)を吸着可能な認識部位を構築する。4.光触媒をハイブリッド化し,補足物質の光分解による媒体自浄作用を付与する。これらの小目的の複合的達成により,水を自発的に吸い上げることにより,抗菌,有害物質捕捉能を効率的に発現し,これら捕捉物質を光分解により自浄する。すなわち,自然エネルギーを利用した循環型抗菌水質保持・環境浄化システムを構築することを本研究の目的としている。 本年度は,平成22,23年度の成果に基づき,重合で得られる3級アミンをそのまま,あるいは4級化することによる抗菌機能への影響についてさらに詳細に検討し,抗菌機能のメカニズムの解明と抗菌機能最適化を図った。その結果,4級化に用いるハロゲン化アルキルや塩酸などの酸によって,発現する抗菌効果の発現速度や継続時間に差異があることが分かった。菌選択性の発現に関しては,現段階では明確な結果を得ることが出来ていないが,評価に用いた大腸菌に関しては,高分子多孔体の表面特性によって抗菌機能への影響があることが明らかとなった。研究代表者の病気により,研究を平成24年度に繰り越すこととした。 抗菌機能の菌選択性および,重金属に対する捕捉能,並びに光触媒に関する検討では,現在検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗菌性の発現に関しては,一定の成果を得ているが,表面特性との関連が明確ではなく,今後の課題として残されている。研究代表者の病気入院により,研究の一部を平成24年度に繰り越すが,本研究の主要成果である,高分子多孔体による固体抗菌性の発現に関してはすでに明快なエビデンスを得ていることから,研究期間である平成25年3月までには当初予定した課題が明確になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
重合で得られる3級アミンをそのまま,あるいは4級化することによる抗菌機能への影響についてさらに詳細に検討し,抗菌機能のメカニズムの解明と抗菌機能最適化を図る。また,細胞が通過する多孔質体の細孔径の制御により,抗菌性に細胞の大きさに基づく「種選択性」が発現するか?を併せて検討する。 平成22,23年度の研究により,4級化を行うことで抗菌機能が大幅に上昇することが明らかとなったが,高分子多孔体(共連続体)表面の化学構造と抗菌機能の間に明確な関連性が得られなかった。このため,本年度は第一に,高分子多孔体表面化学種と抗菌性の関連性について詳細に検討を行い,抗菌メカニズムの解明を行う。 抗菌機能発現には,菌体と高分子多孔体表面の物理的接触が重要であることは明らかと考えているため,細孔径を制御した高分子多孔体を合成し,これらを用いることによって,抗菌性に菌選択性が発現する可能性があるかどうか?について詳細に検討を行う。その後,物理的な大きさの異なる種々の菌体を用いることで,これらによる抗菌性発現の差異を詳細に検討する。これら課題の達成により,高分子多孔体による抗菌機能発現の最適化を行う。これらの検討には,通水性の最適化も重要な要因となるため,平成22.23年度に得られた結果も考慮に入れながら検討を進める。
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