本研究は、金属の核数と距離が精密に規定されたポリオキソメタレートアニオンと対カチオンとの複合化による機能性固体の構築を、サブナノ~ミクロンレベルで行うことを目的としている。特に無機物の持つ機能性(主に凝縮(吸着)・変換サイト)と有機物の持つ構造設計性(親水性/疎水性、構造柔軟/堅固、動的自由度の導入)の協奏による新奇な機能(吸着分離、吸蔵、触媒、イオン伝導、磁性、電子材料)の開発に重点をおいている。平成23年度までは有機―無機複合化による機能開発を行なってきたが、平成24年度は、無機イオン性化合物を取りあげた。ヘテロポリ酸アルカリ金属塩A3[PW12O40]は、ヘテロポリアニオンが体心立方構造をとり、立方体の各辺と面の中心にアルカリ金属イオンが存在する。カチオンとアニオンのサイト比は3:1であり、電荷比と合致する。一方、アニオンを3価の[PW12O40]3-から4価の[SiW12O40]4-に置換すると、電荷比‐サイト比のミスマッチによりアニオンサイト欠陥が生成した。この欠陥サイトには、水は吸着されるもののメタノールやエタノールは吸着されず、サイズ選択的な吸着特性を示した。また、この欠陥サイトを利用すると、対カチオンであるセシウムイオンが種々の一価カチオン(リチウム、ナトリウム、ルビジウム、銀など)に交換されるものの、二価や三価カチオンには交換されず、選択的なイオン交換特性を示した。
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