研究課題/領域番号 |
22310060
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
辻 正治 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (30038608)
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研究分担者 |
辻 剛志 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (50284568)
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キーワード | ナノ材料 / コア・シェル微結晶 / 結晶成長 / 複合金属材料 / エピタキシャル成長 / ポリオール法 / 格子不整合 / イオン化傾向 |
研究概要 |
近年、二元系金属ナノ微粒子は一元系微粒子とは異なる優れた特性を示すことから、その合成法の開発と応用に関する研究が活発に行われている。本研究の目的は二元系金属コア・シェル微結晶の合成に関して、これまで蓄積した様々な研究手法を駆使して、世界に先駆けて(1):コア・シェル構造相関を用いた新規金属ナノ微結晶のサイズ・形状選択的合成、(2):コアにイオン化傾向が高い金属を有するAg@Au微結晶を初めとするコア・シェル微結晶の新規合成法の開発、(3):(1),(2)で合成したコア・シェル微結晶のカーボンナノチューブ(CNT)やグラフェン表面上での配列合成と新規機能材料として応用することで、複合金属ナノ微粒子の合成と応用の分野でブレークスルーを達成することである。 本年度は上記の(1)の研究ではAu@Pdコアシェルナノ微結晶の形状選択的合成および(3)の研究では単層カーボンナノチューブ(SWCNT)表面でのPd微粒子の合成について研究した。その結果、Au@Pdの合成では世界に先駆けて正八面体、三角プレート状、十面体、二十面体、ロッド状のコア・シェル微結晶の合成に成功し、そのエピタキシャル結晶成長機構について多くの新知見を得た。各微結晶の最適合成条件を検討した結果、シャープなエッジを有する十面体Au@Pd微結晶を室温でもPVP存在下で合成可能なことを見出した。これらの成果は結晶成長分野のトップジャーナルの一つである英国化学会のCrystEngComm誌で発表した。またSWCNT表面への金属微粒子のPd担持に関する研究では、マイクロ波加熱を用いることで粒径が数nmのPdナノ微粒子をスーパーグロースSWCNT上に高密度担持可能なことを見出した。Pd/SWCNTは新規触媒としての応用研究を民間企業と実施中した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では二元系金属コア・シェル微結晶の合成に関して(1):コア・シェル構造相関を用いた新規金属ナノ微結晶のサイズ・形状選択的合成、(2):コアにイオン化傾向が高い金属を有するAg@Au微結晶を初めとするコア・シェル微結晶の新規合成法の開発、(3):(1),(2)で合成したコア・シェル微結晶のカーボンナノチューブ(CNT)やグラフェン表面上での配列合成と新規機能材料として応用するという三つの研究課題を設定している。 このうち(1),(3)についての研究は当初の計画通りに順調に進展しているが、(2)については研究が緒についたばかりでやや遅れている。よって研究全体としての達成度は、おおむね順調に進展している(2)の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で実施する二元系金属コア・シェル微結晶の合成に関する三つの課題について(1):コア・シェル構造相関を用いた新規金属ナノ微結晶のサイズ・形状選択的合成について次年度はAg@Pd,Pd@Ag,Au@Cuについて検討する計画である。一部の研究は予備実験を完了した状態である。(2):コアにイオン化傾向が高い金属を有する微結晶の合成についてはAg@AuやAg@Pd微結晶の合成を行う計画で、予備実験を一部完了した状態である。(3):コア・シェル微結晶のカーボンナノチューブ(CNT)やグラフェン表面上での配列合成と新規機能材料としての応用研究に関してはPt/SWCNTのマイクロ波加熱合成を行い、民間企業と新規太陽電池への応用を目指した共同研究を開始している。本研究に関して研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はなく、今後は当初の計画通り研究を推進し、次年度は最終的なとりまとめを実施する計画である。
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