研究概要 |
スピンノイズ測定システムの開発を効率的に進めるため、853nmの波長可変レーザを用い、Csガスのスピンノイズ測定を行った。曲り導波路構造のレーザチップを用いる波長可変レーザ、光学ブリッジ、広帯域平衡光検知器、高周波増幅器、スペクトルアナライザーを最適化することにより、Cs原子の核磁気共鳴の測定が可能になった。ごく最近、Cs原子のスピンノイズ測定がW.Chalupczak等,(Phys,Rev.A83,032512(2011))により報告されているが、彼らの測定精度を超えるS/N比での測定ができた。 極低温・磁場化で顕微分光により1マイクロメーター径のスポットでInAs量子ドットのスピンノイズ測定を1060nmの波長可変レーザを用いて、共鳴励起したで行ったが、磁気共鳴の観測にはいたらなかった。1マイクロメーター径のスポットには数百個の量子ドットがあり、そのうちの1~2%が正に荷電していると考えられるが、10個程度のスピンの観測にはまだ、測定感度が足りないようである。 測定感度の飛躍的向上を目指して、強力なFPGAを内蔵する高速(800MHz-14ビット)ADコンバーターを用いて、デジタイジング信号をリアルタイムでフーリエ返還し、積算する新しいタイプのスペクトルアナライザーシステムを構築した。スペクトルアナライザーはスペクトルチャンネル以外の光子情報を捨てるのに対し、開発したシステムは測定時間のほぼ半分の光子情報からスペクトルの抽出を可能にしている。このシステムではスペクトルアナライザーを用いた場合に比べて、一桁以上の効率でスペクトル揺らぎ情報の収集が可能であることが分かった。しかしながら、長時間の測定においては、デジタイジングに起因すると考えられスペクトル構造が出現し、測定効率の向上が必ずしも測定感度の向上につながっていないことが分かった。
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