研究概要 |
本研究は単一量子ドットで重要な電子スピン-核スピン間相互作用(超微細相互作用)の制御・応用を目的として,これまでの成果をさらに発展させ,単一量子ドットでの核スピンの全光学的制御を行うことを目標としている.このために今年度は,円偏光度(DCP)およびオーバーハウザーシフト(OHS)をプローブとする以下の核スピン分極の超精密高感度ナノプローブ技術を開発した. 1.光ヘテロダイン法によるOHSの高感度検出技術の確立: まず光ヘテロダインポンプ・プローブ測定系を構築し,単一量子井戸試料を用いて,通常のポンプ・プローブや四光波混合信号とヘテロダイン法を用いた場合の信号を比較し,ヘテロダイン法の効果を確認するとともに,参照光強度等の最適化を行った.これらの結果の1部は国際学会で発表を行い,詳細は修士論文としてまとめた. 2.単一QDでのハンル効果による核スピン検出: 単一QDでのハンル効果を用いることにより,零磁場での微小な核スピン分極によるOHS(5μeV)の検出に成功した.また同時に観測されるDCP変化から零磁場での電子スピン緩和時間を評価し,これまで同一試料で行った他の手法による評価結果と良い一致を得た.これらの成果は,国際会議,学術論文として発表した他,詳細は博士論文としてまとめた.この成果は単にこれまで成功していなかった自己集合QDでのハンル効果観測に成功したというだけでなく,電子・核スピン結合系ダイナミクスのモデル構築に貴重な情報を与える成果として評価されている.
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