研究課題/領域番号 |
22310065
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
木塚 徳志 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10234303)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 単一分子素子 / 電子顕微鏡 / 走査プローブ顕微鏡 / その場観察 / フラーレン / カーボン / ナノカプセル / ナノギャップ |
研究概要 |
本年度は、昨年までの液-液界面析出法に加えて、ガス中蒸発法、特に、直流アーク放電を加熱源として、中空および金属内包カーボンナノカプセル(巨大フラーレン分子)を効率的に合成した。合成した材料は、金属ではニオブ、ニッケルおよびコバルトを、炭化物ではバナジウム炭化物とコバルト炭化物を内包したカーボンナノカプセルである。合成時の各種条件を変え、目的粒子合成の効率を改善し、単一分子素子合成時の成功率を高めた。合成したナノカーボンを、透過型電子顕微鏡法で観察し、各ナノカーボンの外形、表面、欠陥、および両者の界面構造の原子配列を観察した。特に界面構造に関しては、各単一分子素子の構造と特性を支配する因子となるために詳細に解析し論文にまとめた(研究発表欄参照)。また、代表的な中空フラーレン分子であるC60分子を高分解能透過型電子顕微鏡観察し、格子像の計算機シミュレーションとの対比から、構造決定の結像条件を明らかにして論文にまとめ、このフラーレン分子を用いた単一分子デバイス研究の基礎を固めた(研究発表欄参照)。 上記の単一分子を本研究者の開発してきたその場高分解能透過電子顕微鏡法を用いて、単一分子接合デバイスを作製した。まず、原子直視顕微鏡実験顕微鏡の試料室内部で、単一分子を挟むための一組の金属ナノチップを作製した。次に、金属ナノチップを操作し、各種ナノカーボン分子の一つだけを金属チップの間に挟み、単一分子デバイスを作製した。作製したデバイスで用いた分子は、前述のカプセルでコバルトと炭化コバルトを内包したカーボンナノカプセルである。この作製過程をその場で電子顕微鏡観察し、その原子ダイナミックスを調べ、これらのデバイス形成の機構を明らかにした。こうした構造のその場観察と同時に、作製中、および作製後のデバイスの電気伝導特性を構造観察と同時に評価し、論文にまとめた(研究発表欄参照)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目的は、単一分子接合デバイスの中核となるフラーレン分子と、中空および内包カーボンナノカプセルを、昨年度までとは組成を変えて新たに合成すること、合成した各ナノカーボンの構造解析、およびナノカーボンを用いた単一分子素子の作製とそのプロセス解析である。研究業績の概要欄に記載したように、本年度は、これらの目的が十分に達成された。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までの成果で、複数種の金属および金属を内包したカーボンナノカプセルが合成できるようになった。さらに本研究の目的である合成したナノカーボン分子を用いた単一分子接合デバイスの作製を、コバルトとコバルト炭化物を内包したカーボンナノカプセルに関して成功し、その過程を解析することができた。さらにその電気伝導について解明できた。本年度の成果は、これまで計画してきた本研究の方針が的確であり、この研究方法が単一分子デバイス研究を進めるにあたって極めて効果的で、この分野の研究を先導できることを示している。今後は、これまでの研究を進め、より多くの種類のナノフラーレン分子を合成し、その単一分子デバイスを作製し、本研究を拡張していく。
|